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「仕方ねーから食ってやるよ。」
「…何様だ、てめぇは。」
俺は椅子に座り、奈良崎の作った朝食に箸をつける。
一口一口、その味を噛みしめた。
…素朴だけど、
西田の料理の方が旨いけど、
…こいつの温かさが感じた。
「…うまい」
「だろ?………っておい、」
「うまい」
「どうしたんだよ、お前…っ」
俺は泣きながら、「うまい」と繰り返した。
奈良崎はそんな俺の様子に戸惑っていたが、そっと俺の頭を撫で始めた。
「…そうか、よかった。」
奈良崎は嬉しそうに頬を染める。
奈良崎…好きって何だ?
好きって、どういう感情だっけ?
俺はお前を虐めたいけど…
グチョグチョに虐めてやりたいけど…
時々、優しくしたくなる。
俺は泣くのを止めた。
「…奈良崎。」
「…ん?」
「また昨日みたいにキスしてくれよ。」
「…………お前、起きてっ」
奈良崎は俺の頭から手を離し、顔を真っ赤に染めた。
「なぁ、…いいだろ?」
俺が身を乗り出し、奈良崎の頬に手を添えると、奴は体をビクっと揺らした。
「…ゃっ」
「昨日は積極的だったじゃん。」
奈良崎の瞳は揺れていた。
「……で、きないっ」
「…なら、俺がしよーか?」
奈良崎の唇を指でなぞってやると、目をとろとろにしていた。
「可愛くおねだり出来たら、してやるよ。」
俺はこいつを可愛いと思い始めてなんかいない。
奈良崎は俺の手の平に堕ちている。
そいつで遊ぶのも愉しいじゃないか。
「………して、」
「聞こえねーよ。」
奈良崎のふっくらとした唇を押して指を離すと、プルンッと弾けた。
「…ちゅー…して、…欲しっ…」
奈良崎は目を潤ませていた。
奈良崎がどうして目を潤ませていたのかは分からない。
快感からなのか、喜びからなのか、それとも…
「可哀相に…」
俺なんかを好きになっちゃって。
俺は熟れた果実のような奈良崎の唇にかぶりつく。
それから、俺の意とは反して。
俺たちは小一時間ずっとキスをしていた。
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