好きっ!
私立尊那門学園の入学式が近づいてきている今日この頃。
あれから、俺は奈良崎を抱かなかった。
なんだか…気が進まなかったのだ。
奈良崎は俺にどんなに酷い事をされても黙って俺を見つめてくるのだ。
何だかあの目は苦手だ。
俺が奈良崎にあまり構わなくなると、不思議と奈良崎から俺に声を掛けてくる事が多くなった。
そして、俺との少しの会話の中でアイツは微笑む事が多くなった。
俺は素直に「気味が悪ぃ」と言うと、奈良崎はムッとした顔をする。
本当にコイツはあの奈良崎か…?
会った頃とは印象がまるで違う。
俺は何だか居心地が悪くて、純くんの部屋に入り浸る事が多くなった。
相変わらず西田には邪険にされたが、俺が西田に声を掛けると返事が返ってくるようになった。
西田を飼い慣らす愉しみを覚え、「首輪は何色がいーか?」と聞いたら、また無視されるようになった。
相手は中々手強い。
入学式が始まるまでの数日、俺は純くんと某RPGを攻略すべく、純くんの部屋に泊まり込みになった。
西田は俺がやって来る度に顔をしかめた。
本当にこの男は見ていて飽きない。
そんなに心配しなくても、あれから純くんには触れていない。
時より、純くんは俺に寄り添い、肩に頭を乗せて甘えてきたが、俺は何もしていない。本当だ。
純くんもあと少しでホモになるという所だろうか。あー、愉しい。
でも、西田は純くんの事が好きみたいだけど2人って完全に受同士だよな…?
◆◇◆
俺は相変わらず毎日純くんにセクハラをし、それを西田が般若の形相で純くんから俺を引き剥がす。
それが楽しくて面白くて。
いつの間にか俺の中の、この学園に来た時の不安が消えていた。
俺が207号室滞在中、西田(最近、俺は本人の前では『西やん』と呼んでいる)が、朝昼晩と、三人分の飯を作ってくれた。
西田の料理は田舎料理っぽかったけど完成度が非常に高く、俺もなんだか食べていて実家が懐かしく感じた。
俺が西田の料理をもそもそと静かに食べていると、西田がポンポンと俺の頭を優しくたたいてきた。
…ツンデレなのか?
そして、いよいよ明日が入学式となり、俺は流石に208号室に戻ることにした。
―午後8時。
208号室帰宅。
自室に入ろうとすると、奈良崎が向かいの部屋から顔を出した。
「…おかえり」
「…ああ。」
「飯は?」
「…食った。」
「…そうか。…あのさ、」
「俺、疲れてんだ。話なら明日でいーだろ?」
純くんと毎晩ゲーム三昧だったからな。
俺は奈良崎の反応を見る事なく、そのまま自分の部屋に入った。
風呂は明日の朝でいいやー…
俺はそのままベッドに眠りこけた。
夜中に俺の部屋のドアがガチャッと開く音がして意識が目覚めた。
どーせ奈良崎だろう…。
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