黒田の正体




季節は5月。

クラス替えから約1ヶ月が経とうとしている頃、穏やかな昼下がりの2-D教室内はやたら騒がしい。


「永井、便所行くぞ」


と、俺の席に腰を掛けて話し掛けてくるのは山田。

山田は、一言で言えば俺と同類。
世間一般ではチャラ男と分類される訳だが、…俺ってチャラ男なんだろうか?よく分からない。
そこは置いといて。
山田は無駄に高身長な上、顔が甘い。中学の頃は野球なんかやっていたせいか、体も筋肉質で男らしい。
自分の親衛隊からはキャーキャー騒がれているらしいが、俺から言わせればただの馬鹿丸出しな奴。

…まぁ馬鹿な俺のダチだ。


「何が悲しくてお前と連れションをしに行かなきゃならねーんだよ。」


こいつは毎日のようにこんな事を言ってくるが、何かあるのだろうか?


「いやぁ、永井と一緒に廊下歩くと、俺の株が上がるんだよね〜。可愛い子チャン達にもっと騒がれたいんだよ俺は!」

この馬鹿野郎がぁ。

そんな下らない理由でわざわざ俺を上の階にあるトイレに毎回連れて行っていたとは…。


「山田、奴らは可愛い子チャンじゃねぇ。黄土色の声をした男どもだ。下にも立派なブツをぶら下げている。」

「…永井は、相変わらずそんなダセー事言ってんのなぁ。」


うーん、今にも血管がぶち切れそう。

仕方ない。
優しい優しいこの俺が、浮かれているコイツに真実を伝えてやろう。


「…知ってるか山田?俺らはどうやら、その可愛い子チャン達に『Dクラスの似非アイドル』と呼ばれているらしいぜ?」


…どうだ、山田。アイツらは女みてーな顔をした腹黒い生き物なんだよ。


「?アイドルなんだろ?」

「…」


…まぁ、聞いた相手が悪かったな。うん、山田なんかに期待した俺が悪かったんだ。

早くしないと煩いから、そろそろ便所にでも行くか。




しっかし、うるせー教室だ。









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