7/79

彼女の事が気になりだしてすぐに夜久に言うと、あ、わかるソレといわれて、思わず間抜けな声が出た。

「意外って言われると思ったわ」

「そーか?必死に生きてる感じがしてかわいいだろ」

と言われたのでムッとすると、誰も取ったりしねえから安心しろよとカラカラと笑われた。心を読まれた様で面白くない。

花田さんの極度の赤面症のおかげでクラス替えのあと、割と早い段階で彼女を覚える事が出来た。赤くなっている姿をなんとなしに見ていた時、ショック状態から解放された表情を見て一瞬で落ちたのは記憶に新しい。

偶然にも隣の席になることもでき、これから仲良くなれるだろうと簡単に考えていたが、そう甘いもんではなかった。あのメモのやり取りから少しは話すようになったものの、相変わらず真っ赤になる姿はたまにこっちが苦しくなる位だ。でもその姿が見たくてわざと彼女の方に体ごとむけて愛でていると、『黒尾、お前それ花田さんいじめてるようにしか見えねえよ』と夜久に言われた。その声にパッと表情を明るくさせた花田さんは助かった!みたいな顔をしているので多少傷ついた。俺には見せたことの無い表情を見せられそれが例え信頼のおけるチームメイトであってもおもしろくないのでムッとしていると、子供か!と夜久に言われて心の中でお前に言われたくねえよと言っておいた。夜久は花田さんと二言三言交わすと『ご愁傷さま』と告げて自席に戻る。うるせえよ。

赤面症は対人恐怖症の一種だと研磨に言われた。度合にもよるが、慣れれば赤くなる事も減る、と。どうやらそれは本当で彼女はだんだんとクラスに溶け込んでいるように見え、先程の夜久との会話も普通に笑っていたし、どもることなく話していた。しかし、いまだに俺にはどもるし、赤くなるしで可愛いけれど面白くはない。

部活の時に夜久になんとなく言うと『俺が意識されてないからだろ』と言われ、『良かったな、主将』と一言余計だ。もしかしたらと思わなかったわけじゃない。あれ、もしかして、いや、まさかと葛藤して仕舞に研磨に聞いてしまったのだから重症だ。ちなみに研磨には『知らない』と言われた。ですよね!

そもそも俺が彼女に惹かれたのは緊張から解放された表情を見てからで、それがいまだに俺に向けられていない事に多少の焦りはある。俺の左隣で一生懸命板書を書き写す姿をじっと見つめると、視線に気づいたのか、ギギギとこちらを見た。もうすでに真っ赤だ。

「ななななんですか」

「可愛いなと思って」

え!と今にも立ち上がって注目を集めかねないので人差し指を立てて静かにするように合図する。彼女は思いっきり困っているのが見て取れてふっと笑いが込み上げた。

「き、緊張するから見ないでください」

「やだ」

そう答えると絶望的みたいな顔をするので笑いをごまかすためにゲフンと咳払いを一つ。

「花田さんはさ、いつになったら俺にも赤面しなくなるんだろな」

「わ、わかりません」

「俺以外にはもうあんまりしねえのに」

そう言ってニヤリと笑えば花田さんは目を白黒させた。これは言い訳を探している表情であろうから、そんな事はさせないと畳み掛ける。

「俺もう結構我慢したと思うんだけど、もう好きって言っていい?」

「え!わわわわわかりません!」

「なにそれ、いつわかんのそれ」

「も、もうちょっと待ってください」

「もうちょっとってどんくらい?結構待ったと思うけど?」

彼女は勘弁してとばかりに教科書を頭の上にのせて顔を伏せてしまった。もうちょっとと言うからもうちょっと待ってみるか。とりあえず部活前まででいいか、と思う金曜の5時間目。







20140921
mae ato
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -