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廊下をふらふら歩いてるのは同中の花田だ。具合でも悪いのかとのぞき込むと資料やら集めたノートやら大量に持っていた。

「手伝うか?」

彼女の頭上から声を掛ければ、かなり息を切らしていた。

「あ、金田一。持ってくれるの?」

助かるよとクラス分のものかノートを遠慮なく渡された。これに加えて教科で使ったであろう資料の分厚い本三冊をいっぺんに持つとか普通ならしないだろう。つうかノートよりもそっちの資料の方が重いだろうに、そっち貸せよと言えば助けてくれるだけでありがたいと断られた。

「何度かに分けて行けばよかったんじゃねえの?」

「だってめんどうだもん」

それなら多少辛くても、一度で運んだ方が効率がいいでしょ?と言われたが、あんなスローペースでフラフラ運んでいては効率もなにもあったもんじゃないなと思ったが口には出さなかった。

「お。金田一じゃん」

言われて振り返ると我が部の主将の及川さんがいた。

「あス」

「徹ちゃん」

俺の後ろからひょっこり顔を出した花田は及川さんに声を掛けた。すると及川さんの顔つきが変わる。それはもう劇的に。いつものうさんくさい笑顔はどこへやらだ。

「おーい金田一?ちょーっといーか?」

「え、はい…」

嫌な予感しかしないが体育会系が染み付いた体は悲しいことに先輩は絶対だと覚えてしまっている。

「なーんでお前がうちの夢子と一緒に歩いてんのかなー?」

うちの夢子ってなんだ!?及川さんの新しい彼女なのかコイツはと焦ったが、そういえば岩泉さんも合わせて幼なじみって言ってたのを思い出した。ていうか及川さんの視線が怖すぎるというか痛い!

「いや、なんか重そうだったんで荷物持ちしようかなって」

そう言うと及川さんは『ああ!』と花田の持ってた分厚い資料を奪って俺の持っている荷物に重ねる。花田はちょっと徹ちゃん!と慌てていたけど、俺としては及川さんからの絶対零度の視線から逃れる事が出来るなら重さで手が取れてしまった方がマシだった。

「いい心掛けだけどね金田一。重い方を女の子に持たせるなんてまだまだだね。そのまま夢子の下僕の様に荷物を運ぶように。」

夢子はそのまま金田一に荷物持ってもらいな、と及川さんは去っていった。その隙にと花田に荷物を奪われそうになったけど、そんな恐ろしい事絶対に出来ない。いいから俺持つからと言った顔は自分でわかる位に引き攣っていた。

「ごめんね金田一」

おそらくそれは荷物を全て持たせてしまった事と及川さんの態度の両方に対する謝罪だとわかったので、いや別にお前のせいじゃないからと言うと彼女は笑ってくれた。

「よう」

「岩泉さん。あス」

「あ、岩ちゃん」

とまたしても俺の後ろから出てきた花田を見て今度は岩泉さんの顔色が変わる。なんかデジャヴ。
岩泉さんは、顎だけで俺を呼んだ。それで俺は今朝の占いが最下位だった事を思い出した。厄日というのは本当にあるんだな、とも。

「なんでお前が夢子といる?誰の許可をもらって?え?」

「いや、俺はただの荷物持ちっス」

ほらコレと見せれば、こんな大きな荷物なのに初めて気づいたみたいな顔をされた。どんだけ花田しか見えてないんだよこの人達。

「当たり前だ。お前なんか荷物持ち程度で丁度いいだろ。つーかコイツに手ぇ出したらわかってんな?」

ええ、ええ、わかってますとも!背中は冷や汗でひんやりするし、顔とかやつれてる気がします!俺の後ろではちょっと岩ちゃんとオロオロしている花田。これからも重いもんは金田一に運ばせろよ、と去っていった。彼女は俺に重ね重ねごめんと項垂れる。

あの二人に守られてる間、コイツに彼氏なんか出来ないんだろうな、と俺は花田の謝罪を上の空で聞きながら思っていた。







20140928
mae ato
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