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 僅かずれた想い・後編【ユリフレ・七夕・甘切】帝涜さまからサイト一周年祝いに頂きました




フレンを苦しめる全てのものから見えない、遠い所に彼を閉じ込めておきたいのも本心だ。それは、ユーリの心のまた奥底にあるいけない、醜い思い。フレンへの愛情に気付いたと同時に、見えてしまったもの。
それでも、まだフレンが笑ってくれているから。自分の隣に居てくれるから、ユーリは純粋で居られた。もし、先程の仮定の話が現実となったら……もう、止まりはしないだろう。

「ユーリ、ちょっと離してくれないか?」

「何でだよ、まだ引っ付いてたいんだけど」

「……取りたい物があるんだ。少しくらい、我慢してくれないか?」

何かを取りたがっているフレンの身を、離れたくないと言う風に更に強く引き寄せる。珍しく甘えてくるユーリに、彼は赤面したが折れ ることはなかった。いやに引き下がらないフレンを渋々離すと、仕方ないと言った様な微笑みが零れた。
フレンがいつも執務をする机の上から取ったのは、細長い紙であった。丁度、エステルが話していた願い事を書くものと酷似していた。

「これ、エステリーゼ様から渡されたんだ。お二人でどうぞ、って」

「……願い事、ねぇ」

渡された紙を摘まみ上げ、興味なさげに見やるユーリ。折角エステリーゼ様から頂いた物なのに、存外に扱うなというお小言は飛んでこない。それが何だかつまらなくて、ユーリはフレンの方へ視線を滑らせる。
そこには、ユーリのことより願い事を何にしようかということで、頭をいっぱいにしているフレンが居た。久し振りに会えたというのに、恋人を放っ て叶うかどうかわからないものに目を奪われている。そんな姿に、妙に苛立ちが募ってしまった。

「あ、ちょっとユーリ! 何す……っ!?」

「願い事なら、星じゃなくてオレに言えよ。オレに出来る範囲のことなら、確実だろ?」

フレンの手からペンを取り上げ、テーブルの上に転がす。眉を吊り上げて、怒る彼の身体をソファに押し倒した。楽しみを取られた子供みたいな表情は成りを潜め、今は空色の瞳が丸くなっていた。
きょとんとしていた顔に、赤みがささったことでユーリは片頬を上げた。愛らしい、吸い込まれそうな瞳が自分だけを見ている。自分を意識してくれていることが、何よりも嬉しかったからこそ笑みが漏れてしまったのだ。

「え、な、何……!」

「なぁ、言え よ。お前の願いは何だ?」

「い、言わない! ユーリの願い事聞くまで、僕は言わない!」

「……フレーン?」

現在の状況の羞恥からか、フレンは中々口を割ろうとはしなかった。剣呑な瞳になり微笑を携えるユーリに、怯えながらも彼はぷいとそっぽを向いた。
意地でも言うつもりはないだろうフレンに、ユーリは内心で溜息をついた。そして、実力行使に出ることに決めた。ユーリは彼のインナーの、丁度首元の所に手をかけた。不埒な手に気付いた彼は、更に顔を赤くしながら抵抗を示してきた。

「や、何して……っ!」

「言わねぇからこうなるんだぜ? ほら、早く言えよ」

「い、言うから、やめ……ユー、リぃっ!」

普段日に当たらない、白い首筋が露わになり かぶりつきたい衝動に襲われる。だが、そこは抑えて舌を這わすに留めた。今はフレンの本音を聞く為の強硬手段だと、自分に言い聞かせる。
生温かい感触が首筋を這う感覚に、フレンは身体を震わせた。案の定、先程より何倍も早く彼は折れた。少々名残惜しいが、ユーリは唇を離して涙を浮かべる空色の瞳を見やった。

「……笑わないでよ?」

「あぁ、笑うもんか。他の誰でもない、フレンの願い事だからな」

「……ユーリとずっと一緒に居られたら良い。それが、僕の一番の願いだよ」

恥ずかしそうに、今まで秘密にしていたことを話す様に小さな声でフレンは言った。世界の民よりも、自分を大事に思ってくれていたことにユーリは驚き目を見開いた。
フレンの中では世界とユー リが、どちらも一番大切だということはわかっている。だが、それは同じ所に分類されている訳ではなかったのだ。ユーリはユーリ、世界は世界と考えてくれている。
自分の命を懸けてまで守る時がくる世界よりも自分が大事だと、はっきりフレンは言った。それがユーリの何かを叩き、僅かなひびを入れた。何かなどわかっている。今まで醜く、黒い感情をせき止めていた自身の良心だ。

「……それこそ、オレに願うべきじゃねぇか」

「う……! だって、面と向かって本人に言うのは躊躇われるじゃないか」

「じゃあ、もう一回言って。ユーリとずっと一緒に居たい、って」

「……ユーリ?」

ユーリの紫紺の瞳が、僅かに色深くなっていることにフレンは気付く。首を傾げ、どう したのかと言外で問う彼にユーリは微笑みかけた。それは、今まで浮かべていた怒りによるものではない。
それに安心したのか、フレンは探ることを止めて何とか勇気を振り絞ろうとしている。ここで自分の黒い感情に気付いてくれたら、まだ止められたかもしれないのに。彼の姿を見下ろしながら、ユーリはそう思っていた。

「……僕は、ユーリとずっと一緒に居たい。駄目、かな?」

きっと、気付いて嫌だと言ってくれたら、フレンの為に感情を消すことも出来る。彼を、彼の隣を誰にも渡したくない。見る者、苦しめる者、あの優しさを受け取る者。他全ての手や目から、離れさせたいという常識を越えた独占欲。

「駄目なんかじゃねぇよ、オレの願いも同じだ。フレンとずっと一緒に居た い……いや、ずっと一緒に居ような」

自身の欲が混じった、純粋とは言えない笑みを向けてからゆっくりとフレンに口付けた。この重くて大きい愛情にフレンが気付いた時も、今の自分を保っていられる様にとユーリは願った。
二人の願いは同じであったが、どこかずれていた。そのことに気付かず、幸せと共に口付けを甘受した彼は、何時そのことに気付くのか。
どうか気付かないで欲しいと、もう一つの願いを星に届けた彼は素肌に手を伸ばした。










→後書き



ユリフレの話です。

璃鴉さん、サイト一周年おめでとうございます!
これからも頑張って下さいね!自分、璃鴉さんの可愛らしいユリフレを見に、日参する気満々ですので←

…さて、懺悔の時間だ(←おい)
璃鴉さんのサイト開設日が、七夕ということでその要素を取り入れたのですが…。何だろう、七夕なのに暗い…orz
甘々下町馬鹿ップル、のユリフレの方が良かったですかね…(焦)

璃鴉さんの作品を見ていると、ユーリの愛が大きいものが多かったので…。こういう方がお好きなのかな?という判断だったのでしたが…。
違っていたり、お気に召さなかったら言って下さい!出直してきます…!
フレンちゃんは、鈍感で天然で純粋な天使が良いと思いました←

それでは、長くなってしまい済みません。
これからも、是非帝涜と仲良くしてやってください!vV


【帝涜さまへ】

またまた素敵なユリフレ小説をありがとうございます
一周年…本人も忘れてましたのに、まさかこんなに素晴らしい小説で祝っていただけるなんて…!感激し過ぎて涙が…(>_<)
こちらこそ、こんなダメダメな変態ヤロウですが、末永く仲良くしてやってくださいませ!
帝涜さま大好きです!!



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