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ナミダスイッチ
ねぇ、早く気付いてよ
ナミダスイッチ
「なんつーか…もうちょっと丸くならないもんかな」
そんなの、無理に決まってるじゃない。
「せめて表面上だけでも穏便にさ」
…それが出来たら初めからしてるでしょ。
「毎回毎回会う度つっかかられんのも、結構傷付くんだよ」
…悪かったね、性格なんてそうそう直らないよ。
「…前々から思ってたけど…上條ってさ」
俺のこと、嫌い?
「えぇ、大嫌いですよ」
嘘。
「そっか…」
嘘だよ、だからっ…
「…でも、俺は好きなんだよ。」
気付いて………
「え…」
スッと、こちらに伸びてくる右手を見つめる。
大きな掌、節張った男らしい指、見た目より滑らかな感触が頬に触れる。
「…泣くなよ」
「な、に…」
溢れ落ちる涙を拭われる。瞬間、頬に熱が集まって朱がさす。動悸も激しい。…目の前が淡く滲んで…また雫が溢れてくる。
涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、指から視線を上げると、困ったような優しい微笑。
「そんな顔するなよ………
…抱き締めたくなるだろ?」
嘘だって知ってるよ。
だって強がっても、目が優しいから。
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