小十郎の律動もなおや激しくなって、政宗は悲鳴を上げる。

「小十郎、…あぁ!待って!ああ、ああ、少し待って……はぁ………っ」
「あれだけ煽っておいて、いつも通りにしてもらえると思ったのか?」
「……は……………ぁ……ちょっとだけで、いいから……………待ってくれ……………っ」
「だめだ。付き合ってもらう」

小十郎の目が細く笑った。






政宗の隻眼が薄く開いた。
気をやってしまっていたらしい。

自分の近くから小十郎が離れる気配がして、思わず小十郎の袖を掴む。
小十郎は動きを止めて政宗に微笑みかけた。

「大丈夫か?」

政宗は声を出そうとして咽せた。

「悪いな。無理させたか」

喘ぎ過ぎて、喉を痛めたらしい。
政宗は咽せぬように小さな声を出して聞いた。

「どこ、行く?」
「水を酌みにいくだけだ」
「俺も行く。一緒にいたい」
「動けるのか?」
「……………」

小十郎は愛おしそうに政宗の額を撫でて、左目にかかっていた髪を横に流してやる。

「すぐ戻るから、少しだけ待ってろな」

小十郎は政宗の額に口づけてから本堂を出て行った。


ぼんやりと政宗は天井を見る。
随分と淫らな事をしたと後悔が押し寄せて来た。
まさか自分から小十郎にしかけて口淫をするなんて……

それに……………。


(尻尾はヤバい、尻尾は……………っ)


小十郎の剛直とあの黒い尾で気が狂いそうになるほど、散々感じまくってしまった。
思い出して、顔が赤くなる。


(Oh、まじかよ……………)


思い出しただけで、自分の下半身がまた堅くなりだした。
さっきの行為を忘れようと、頭を振る。

「どうしたんだ?」

小十郎が水を持って本堂に戻ってきた。

「いや、別に」

政宗は無表情の裏で少し焦る。
そんな政宗に首を傾げてながら小十郎は水を飲んだ。

「俺にもくれ」

政宗に湯のみを渡そうとしたら、政宗は首を横に振る。
ああ、と小十郎は水を口に含み、横になったままの政宗の唇に合わせた。

少しずつ水を流し込む。

口の中の水を全ての政宗に飲ませると、ついでとばかりに小十郎は政宗の口の中に舌を捻り込ませた。

「……………んぅ……」

ぺちゃり、くちゅ、くちゅ、くちゅ……………。


2匹の竜のようがもつれ合うように舌が舌を追い回し、動き回る。
政宗がふいに唇を離す。

「どうした?」
「……………何でもねぇよ」

小十郎はにやっと笑うと、政宗が気をやっているうちに自分が着せてやった着物の上から、政宗の反応しかかった下半身に触れる。

「元気だな」
「ば、ばかっ!触るな!エロ竜!!」
「随分な言われようだが……。あんなに何度も達しても、ここをこんなにしているお前はどうなんだ?」
「……………」

政宗は顔を赤くして小十郎を睨む。

恥ずかしいが本当の事だ。
悔しい。

くすりと小十郎は笑ってそこから手を離す。

「そんな顔すんな。またあえがせんぞ?」
「……………」

政宗はうつぶせになって、顔を隠した。
もういたたまれないやら、恥ずかしいやら、またやりたいやら、身体が痛いやらで、熱を持ち続ける自分の身体が憎い。


「Shit!!何なんだよ、これ。おかしいだろ」

小十郎は、湯のみから水を飲みながら言った。

「ああ、分かった。発情期なんだろ?」
「発情期〜?」

うさんくさげに政宗は小十郎を見上げる。

「んなもんあるのか」
「あるぞ。俺たちだって生き物だからな」
「……………。オレもお前も竜だろ?小十郎はどうなんだよ?今発情期なのか?」

小十郎は首をかしげる。

「俺にはそういうものがなかったからなぁ……………。なんせ、出来損ないの神らしいから」

座ってあぐらをかいていた小十郎の膝の上に、政宗は顎を乗せて言った。

「出来損ないなんて言い方すんなよ」

小十郎は苦笑しただけで、何も答えない。

「それに、お前いつも発情してんじゃねぇか」
「ははは……!確かにお前が傍にいるといつも発情期だな」

自分の膝の上に顎を乗せてる政宗の頭を撫でて、小十郎は肩を揺らせて笑った。

「なぁ、分かんねぇ事があるんだけど」
「なんだ?」
「神に母はいないって前に言ってたよな?なら何でこういう事ができるんだ?」
「こういう事って?」

小十郎がまたニタニタと政宗に笑いかける。

「わかってんだろっ!」

政宗は自分の頭を撫でる小十郎の手を払いのけた。
クスクスと笑いながら竜神は答える。

「そりゃ、子を作る為に決まってんだろ」
「でも、神に母親はいないんだろう?矛盾してんじゃねぇか」
「ああ、そうか。そこから説明しないといけなんだな。"神と神の間の子供"は"神"には成らない」

政宗が眉を顰める。

「じゃあその神と神の間の子供は何なんだ?」
「形としては『妖』に近いな。大体、妖とする定義もないから難しいが」
「あやかし、うーん……………」

政宗はあまりぴんとこないようだ。

「その神の子供同士がまた子を生んで、そしてその子供達がまた次の世代を生んで、少しずつ力は失われて、やがて人間になった」
「え?!」

政宗が驚く。

「ま、一説なんだけどな。北条のじいさんでさえ信じてないような昔からある伝説のひとつだ」
「ふうん」

政宗の髪をまた指で遊ばせながら、小十郎は笑う。

「俺もなぁ、そんな話は信じちゃいなかったんだが……………」
「なんで過去形なんだ?今は違うのか?」
「だってお前がいるだろう?人間なのに竜神としての資質を持ってたから俺の血で目覚めたんだ。
あながちその伝説も間違っちゃあいないかもと思ってな」

政宗は少し考えて、ちいさなため息をついた。

「どうした?気に入らないのか?」
「オレが女だったら、お前の子供生めたんだろ?なんで男に生まれたかなー」

どうせ同じ神になれたのだったら、男と女の竜神の対になりたかったと政宗は唇を尖らせる。

「俺はお前が男でよかったけどな」
「あ?子供嫌いなのか?」
「さぁ。でもお前が女だったら更に他の神がちょっかいかけてくるのが予想出来る。今でも真田や長曾我部がうっとうしいのに」
「そんなもの……………」

小十郎の表情が少し怖い物に変わっているのに気付いて、政宗の言葉が途切れる。

「それに……………子供にお前の乳をやるなんて嫌だ」
「は?」
「子供にお前を取られてたまるか!この乳は俺のもんだ!」
「あ、えっ?!」

小十郎はまだ、ぐったりしてる政宗の着物の袷をぐいと開けるとその桃色の尖りに吸い付く。

「ば、ばか!エロ竜!わけのわからん嫉妬すんなっ!!!」


政宗の叫びが、竜神山に木霊する。

こんな神々に日の本は守られているというのは、人間は知らない。
知らない方がいい事もあるものだ。








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