幼なじみ (3/17)



「こんにちはー、アララギ博士え! ……って、あれ!? あれぇっ、あなた、もしかしてコハク!?」
「……えっ、ベル、……と、トウコとチェレンだ!?」

博士の部屋に入ってきたのは、わたしのよく知る幼馴染の面影を残した3人組だった。素っ頓狂な声につられて、わたしの声も大きくなる。
ふんわりした金髪の女の子も、いかにも活発そうな女の子も、気難しそうな顔の男の子も、忘れるはずがない。懐かしい面子だ。

「コハク、久しぶりね! いつ帰ってきてたの? 戻ってきてたなら、教えてくれたら良かったのに。そしたら迎えに行ってたよ」
「帰ってくるなりトウコのお喋りには付き合いたくないんだと思うよ……。っと、それより、コハク、久しぶり。結構元気そうだね」
「うん。おかげさまで。だけどチェレン、わたし久しぶりにトウコの話たくさん聞きたかったかも。ついさっき着いたばっかりだから……、みんなに教えてなくてごめんね」
「でも、会えて良かったよお! ここにいるっていうことは、前に電話で言ってたようにコハクもイッシュを旅するんだよね?」
「うん、そう。またよろしくね!」

みんなの声や話し方。会えなかった5年の間に電話で何度か聞いた彼女のものだ、と懐かしい気持ちでいっぱいになった。

「でも博士、もしかして博士だけがこのこと知ってたんじゃない?」

トウコの言葉に、あっ、と思う。わたしが博士に連絡した時は、トウコたちもわたしとほとんど同じ時期に旅に出るのよ、としか教えてくれなかった。だから会えたらラッキーね、と。
とはいえ、わたしも吃驚させようと思って、トウコたちに今日戻ってくることは伝えてなかったんだけれども。
チェレンが「確かに」とトウコの言葉に頷いた。

「出発の日を決めたのも博士だもんね。その日サプライズがあるからって。……サプライズって、このことだったんですね?」
「ほら、こんなチャンス、滅多にないじゃない? だから揃って出発できるなんてとっても素敵だと思って」

ええ、だからって秘密にすることないのに! 本当に嬉しいけど! というわたしたちの言葉に、「ごめんね! でもビックリさせたくて」と博士は苦笑した。

何はともあれ、こうしてみんなで再会できたのだから喜ばしい。
聞いた話では、トウコたちもポケモンを受け取っていて、バトルもしたそうで。いろいろ話しつつ、3人もポケモン図鑑を受け取った。


先に1番道路に行ってるね、と残し研究所をあとにする博士を見送ったあと、じわじわと胸のなかに広がる感動。

「そっかあ、わたしたち4人で旅立てるんだ……」

不思議だ。5年も会ってなかった友人と再会したと思ったら、同じ日に、同じ場所から、同じような状態からの旅立ちするなんて。
研究所の出入り口へ向かいながら、ベルが感嘆の息をもらした。図鑑を両手で持ち、かざすようにしてじっくりと見つめる。白い頬っぺたが紅潮していた。

「あ、あたしたち、博士に頼まれたから冒険してもいいんだよね? 自分もやりたいことを探していいんだよね?」
「ああ。図鑑を完成させながら好きなようにすればいい。……僕はもう決めてあるけど」
「えっ、チェレンもう目標決まってるの? 早いね」
「そりゃあ……、僕だってトレーナーになるの楽しみだったから」

チェレンの呟きに思わず聞き返すと、彼は少し恥ずかしそうに眼鏡のブリッジに手を当てて目を逸らす。

「うふふ! なんか楽しくなってきちゃったー! どんなコと出会えるのかしら!」

言いながら、トウコは外へとつながる扉に手をかけた。昼前の日差しが柔らかく差し込んでくる。

「あっ、ねえ。ところでコハクが捕まえたポケモン、一緒に来てるの?」

外へ出ると、ベルがふと思い出したように聞いてきた。その質問に、トウコもチェレンもわたしに注目する。

「ああ、ごめんね。今日は連れてきてないの……。初心に帰って旅立ちたかったから」
「そっかあ……」
「あ! でも、ちょっとしたら呼ぶつもりの子がいるの。わたしも寂しいから」
「ほんと!?」

そんな会話をしていると、ふいにこれまた聞き覚えのある声が。

「あら。コハクちゃん! お久しぶりねえ」
「あ、ママさん! ご無沙汰してます」

トウコのママさんだ。とても綺麗な人。ママさんとトウコは流石親子というべきかな、瞳がよく似てる。意志の強そうな、青い色の目。

ママさんと軽く挨拶を交わしたあと、ママさんはタウンマップを配ってくれた。わたしの分も用意してくれてあったあたり、トウコたちのご両親には伝わっていたよう。……なんか悔しい。

部屋のことは気にしなくていい、ってママさんが3人に話してたのが気になったけど、聞かなかったことにしよう。


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