悪い夢はバクが食べてくれるのです

ふと目が覚めた。
辺りがまだ暗いところを見ると、まだ夜中なのだろう。
腕の中に彼女がいないことに気がついて、起き上がる。
また隠れてカップ麺でもすすってるのだろうか?
そうだったら小言のひとつも聞かせなきゃな…なんて、軽く考えていた。
いつもカップ麺を隠れて食べている時は、脱衣所に隠れている。
なのでいつものようにこっそりと脱衣所のドアを開ける。
確かに彼女はいた、いたが…。
背を向けて泣いていた。
僕が何かしたかな?
もしそうなら謝らないと…。
そう思って、後ろから抱き締めた。
彼女は驚いたようでびくりと身体を震わせる。
「ごめん、驚かせたね」
「みつただ…?」
僕を確めるように名前を呼ぶ。
そうして僕に甘えるように僕の腕に触れた。
「みつただ…」
「どうしてひとりで泣いてたの?」
「…いいたくない」
「とりあえず布団に戻ろう、ね?」
「やだ…」
「ワガママ言わないの、ほらおいで」
無理矢理抱き上げて布団に連行する。
ぐずる彼女をなだめすかして、なんとか会話ができるまで待った。
それまで子供みたいに泣いてぐずって。
かわいいんだけど僕は戸惑ったのも事実だ。
「みつただ…」
「んー?どうしたの?」
彼女の口から出たのは予想外の言葉だった。
「おいてかないで」
「うん」
「ひとりにしないで」
「うん」
「おれたらしょうちしないから…」
「君を置いて逝けるわけないだろう?」
僕が折れる夢でも見たのかな?
縁起でもない夢は早く忘れさせるに限る。
「僕はここにいるだろう?こうして君を抱き締めている、違う?」
「ちがわない…」
「ね?だからもう泣かないで?」
「ん」
ようやく機嫌が戻ったかな?
僕はすっかり目が冴えてしまったけど。
「いい子だからお眠り?僕が抱いていてあげるから」
「うん、みつただ…」
しかし折れる夢を見るなんて。
彼女は正夢にならないか恐れているんだろう。
時々彼女の見る夢は正夢になるらしいから…。
僕が折れても僕の、燭台切光忠の代わりはいるだろう。
でも彼女の夫である僕は僕だけだ。
まだ涙のあとが残る目元が痛々しい。
あとでアイシングも必要だね。
目は閉じられているから、そのまぶたにキスを落とす。
くすぐったそうに身を捩ると更に僕に抱きついた。
うん、僕のお嫁さんは宇宙一かわいい。
朝になっても彼女はまだ夜中の出来事を引き摺っているらしい。
「光忠…」
「何だい?」
「夢を見た」
「うん」
「光忠が折れる夢を」
「うん」
「もし現実で同じことが起きたら私は審神者を続ける自信がない」
「後追いなんてダメだからね?」
「やりかねない」
「ダメだよ」
「光忠…」
「ん?」
「燭台切光忠は数あれど私の光忠は貴方だけだから」
すがり付くように抱きつかれた。
「僕は死なないよ、生きて君を幸せにするんだ」
「ん」
「だからもう泣かないで?ね?」
「うん!」
いい返事だったから彼女の頭を撫でたら、手を取られて唇を寄せた。
「愛してる」
「うん」
「そろそろ僕は仕事の準備をする」
「うん」
「だから、起きようね」
その日は1日僕にべったりだったのは言うまでもないだろう。
やたらとかわいい彼女が見れて、満足だった。
あとでお祓い頼んでおかなきゃ。
僕達に効くのかはわからないけど。

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