待ち時間1:30

ある時期からしばらく、新しい刀剣が顕現しない日が続いた。
練度上げを優先して、新しい合戦場にも行っていない。
と言うのも…。
一番最近挑戦した合戦場で、途中帰還…刀装もボロボロ…練度不足を痛感したせいだからだ。
先に進めば練度上げにもなるし新しい刀剣を拾えることもあるだろうが、リスクが大きい。
何よりそう何度も刀装がボロボロになりダメージを負って帰ってくるようなところでは、レベルに合っているとは思えない。
なので新しい刀剣に出会うのは鍛刀が頼りだ。
「はぁ…またダメか…」
待ち時間に1:30が並ぶ。
私自身またかと思う程度なのだが、彼は必要以上に焦っているようだった。
「そんなに気に病むな、こればかりは仕方ない」
「…けど…」
いっちょまえにしょぼくれおって。
「ごめん…僕に力がないせいで…」
「そんなことはないだろう?確かに刀装作りはものすごく下手だけど…江雪さんも一期も鶴丸も蛍丸も光忠が喚んだんだ、もっと自信を持って?」
そう声をかけたものの、彼はしょぼくれたままだ。
「情けないぞ伊達男、いつものカッコよさはどうした?」
「…うん」
そう言って私に抱きついてくる。
「みっともなくてごめん…君の力になれていないと思うと…情けなくて」
「今にも泣きそうな声を出さないの、まったく…伊達男が台無しじゃない」
「うん」
「とりあえず次は蜻蛉切を喚ぼう、それか岩融」
「うん、がんばるよ」
そう彼は持ち直したかに見えた。
が、ダメだった。
狙うは蜻蛉切、結果は惨敗。
「…ごめん」
「だから泣くなって」
今度こそ本気で泣き出した彼をあやす。
ぐすぐす言う彼をなだめすかす。
「泣いて…ない…」
「泣いてるじゃない…こっちまで泣きたくなるから泣かないの」
「うん」
抱き寄せて背中をポンポン叩いてやると、少し落ち着いたらしい。
こんなに情緒不安定でカッコ悪い燭台切光忠、他にいるだろうか?
でも私にとっては、最高にカッコよくて最高に頼りになる愛しい旦那様なのだ。
あれか?これって手のかかる子ほどかわいいというあれか?
「光忠」
「何だい?」
「三日月宗近を喚べたら」
「喚べたら?」
「私を一日好きにしていい」
ニンジンをぶら下げる作戦だ。
さて、どうなるか。
「後悔するよ?そんなこと言って」
「そうなの?」
「君、褥から出られないよ?」
言うと思ったよ。
でもこれで元気になるんだから、本当に彼は単純だ。
「あー…まぁ想定の範囲内」
「そう、期待に応えなくちゃね」
「応えなくていい…まったく泣いてたと思ったらすぐ機嫌直して…現金なやつ」
「ふふふ」
「さぁ、デスクワークでもしましょ?ここで突っ立ってるわけにもいかない」
「手伝うよ」
「お願い」
そうして執務室に戻って書類を片付け始めた。
三日月宗近に会えるまであと少し。

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