秋の終わり、冬の訪れ

僕は朝の目覚めはいい方だ…と思っていた。
ところが最近、朝起きるのが辛くて仕方ない。
正確には布団から出るのが。
決まった時間には起きられる。
しかし、寒くて布団から出ることができない。
ついギリギリまで布団の中でぬくぬくしてしまう。
また、一緒に寝ている彼女が温かいのもいけない。
どうしても手放せない。
これが冬か…と身をもって実感する。
秋の終わりは本当にあっという間だった。
刀であった時にはわからなかったことだ。
あの頃は意識はあれど肉体はなかった。
雪の冷たさも夏の日差しの暑さも、こうして肉体を得て初めてわかったことだ。
紅葉も終わって、落ち葉で焚き火をしてお芋を焼いたりしたのも記憶に新しい。
焼いたお芋は短刀達のおやつになった。
彼女が僕に半分くれたお芋は、ねっとりとした甘味で美味しかった。
おき火でじっくり焼くのがいいのだそうだ。
そう、冬と言えば鍋。
コンロと鍋を発注して皆で鍋パーティーをしたりもした。
1つのお鍋に4人の計算で、皆で鍋を突くのは楽しかった。
ちゃんこ鍋だったけど、今度は牡蠣の土手鍋やあんこう鍋や雪見鍋もやってみたいな。
そう提案すると彼女も了承してくれた。
腕が鳴るね。
雪と言えば…とうとう本丸にも雪が降った。
軽く積もったので短刀達は小さな雪だるまを至るところに作って置いた。
そういえばその輪に彼女も入っていたな。
彼女も小さな雪だるまを作って、執務室から外の庭の見えるところに飾っていた。
大きいのと小さいの。
夫婦雪だるまだと笑っていた。
もう年末だなぁ…と、彼女はしみじみと呟いた。
年末は何かと忙しい。
年度末に向けての書類作成やら年越しの準備やら。
年賀状も出さなくちゃ…そう言って彼女は頭を悩ませている。
「年賀状なんだけど、結婚したんだから僕達の写真を送るのどうだろう?」
「そんな恥ずかしい真似できるか」
「僕を見せびらかして自慢したいと思わない?」
「恥ずかしいやつだな光忠」
「そっかぁ、残念」
「そんなことより長谷部も呼んできて書類作成だ、今から準備してないと多分年度末に死ぬ」
「了解、呼んでくるよ」
長谷部君の部屋に向かうと読書をしていた。
「長谷部君、書類作成手伝ってって」
「あぁ、わかった」
長谷部君を伴って執務室に向かう。
紅茶とビスケットが用意され、準備万端という様子。
僕達は書類作成に取りかかった。
経費の計上やら設備の問題点など。
挙げればきりがない。
それらをとりあえず今月分までまとめておく。
あとは毎月の月末に同じように書類作成をして年度末に備える。
年度末は地獄の忙しさになる…と、先輩審神者からの助言だそうだから。
それにしても…。
もう1年近くにもなるのか。
思えば出会って1年もしないで結婚。
昔ならいざ知らず、早かったのかなぁなんて思ってしまう。
でもそんなことを考えても詮なきことだ。
もう戻れないし、手離すつもりもない。
冬は、こんな風に感傷的にいろいろなことを考えてしまうんだろうか。
願わくば彼女と毎年雪見酒を飲みたい。
僕の願いはそれだけだ。

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