洗い物のあとで

カチャカチャと食器を置く音が響く。
夕餉のあとで皆めいめい風呂だ晩酌だと思い思いに過ごしている。
僕はと言えばその夕餉のあとの食器の片付けで。
洗った食器を水切りに置いていく。
彼女が審神者になる時に交渉してもぎ取ったという食洗機付き業務用システムキッチン。
始めこそ戸惑ったものの、慣れてしまえばすこぶる使いやすい。
僕と並んで一緒に洗い物をしているその姿は無防備で、思わずイタズラをしかけたくなってしまう。
でもそんなことをしたら怒られてしまうだろうから今はやめておこう。
食器を洗い終え食器を乾燥にセットする。
食洗機が活用されていないとお思いだろうがそこはそれ。
最初は食洗機に食べてそのままの食器を入れていた。
が、意外に食洗機の掃除がめんどくさいと気付いてしまった主は乾燥機として利用することに方針を転換したのだ。
まぁ、皆が疲れてたり潰れてたりした時は掃除の手間を減らすため予洗いをし食洗機として利用することにしているけど。
そうして食器洗いも終わらせ、彼女はお茶を淹れ始めた。
「光忠、お茶淹れた」
「うん」
湯呑みを手に取り一口含むと、爽やかな風味が広がる。
彼女の顔を見つめていると、怪訝そうな顔で僕に尋ねる。
「何?」
「昔を思い出してた」
「昔?」
「そう、僕が顕現してからずっと一緒にこうして…並んでご飯作ったり洗い物してたりしたなって」
「言われてみればそうか」
「今だから言うけど、下心しかなかったよ」
「…ばーか」
「君に気に入られたくて、君と少しでも一緒にいたくて…必死だったから」
「本当にバカな光忠」
「そうだよ?」
「それがホントならこの本丸、光忠の下心に支えられてるようなものじゃない」
「ふふふ、そうだね」
「でも光忠がいなかったらこんなにはがんばれなかったかもね」
頬を撫でるとくすぐったそうに僕に抱き着いてきた。
「…かもじゃなくて実際そうか…光忠がいなかったらこんなにがんばれなかった、ありがとう光忠」
「君の支えになれてるなら、それでいいんだ」
「うん、光忠に支えてもらってる…光忠がいないと立ってもいられないから」
「大袈裟だな」
「事実だからね」
「ちゃんと支えてあげるよ、安心して僕にまかせて?」
「うん」
僕を見つめる瞳が、キスをねだってるように見えて…。
僕はゆっくり唇を塞いだ。
薄く開いた唇は僕の舌を誘うように招き入れた。
絡ませた舌は柔らかくて、もっともっと欲しくなる。
時折漏れる吐息のその色っぽさに、僕は彼女の腰を引き寄せた。
「んっ…!」
それで聡い君はわかっただろう?
キスから解放されたその顔は、羞恥に赤く染まっている。
「こんなところで盛るな、バカ…」
「じゃあ部屋に戻ろうよ、一分一秒でも早く君を抱きたい」
「バカ…」
そう言うとぬるくなったお茶を飲み干して、いそいそと湯呑みと急須を洗い台所から出て行った。
まったく素直じゃないな。
でも彼女のそんなところがかわいいんだから仕方ない。
僕も彼女のあとを追いかけた。

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