その下に触れたい

いつか触れてみたいと思っていた。
その右目はいつも眼帯に覆われていて、お風呂と寝る時以外は外そうとしない。
触れられたくないのだろうか?
そう思って私も触れないでいたのだけれど…。
その夜も仕事を終えて二人で過ごしていた。
それはただぼーっと彼の顔を眺めていただけだった。
「僕の顔に何かついてる?」
「眼帯」
「まぁそうだね」
「気を悪くしたら謝るけど…その下、どうなってるの?」
何気なく聞いただけだった。
本当に何気なく。
「知りたい?」
彼はそう恥じらいながら私に尋ねる。
「気にはなる」
「…うーん…カッコ悪いから見せたくないけど…でもいいよ、君だけに特別」
思いがけず触れる機会ができてしまった。
「その前にちょっとやってみたいことがあったんだ、いい?」
「何?」
「じっとしててね?」
彼の眼帯の紐は伸縮性に優れている。
それを知った時からやってみたくて仕方なかった。
あて布のところをつまんで引っ張る。
何をされるか察したらしい彼が、慌てたように声を上げた。
「ちょ…やめ…つっ…!」
ぺちん、とかわいい音がした。
「痛かった?」
「痛くはないけど…君イタズラがすぎるよ!もう!」
唇を尖らせて拗ねる彼はどう見てもかわいくて、本当にズルいと思った。
「眼帯の下が見たいんじゃなかったの?」
「これも一度やってみたくて…」
「君そういうとこ子供っぽいよね」
「そりゃあ光忠から見たら私なんて小娘でしょ?」
「出会った頃の君はもっと落ち着いてて大人っぽかったのに…」
「光忠だから素の自分をさらけ出せるんだから」
「好意的に受け止めておくよ」
拗ねて突き出された唇に触れるだけのキスをする。
本当に彼はかわいくて…。
唇が触れそうな距離のまま見つめあって、彼の後頭部に腕を回す。
そして眼帯の金具を外した。
外した眼帯を回収する。
「…醜いだろう?」
彼の眼帯の下の秘密。
右目には火傷の跡があった。
目蓋もくっついてしまって、開かないのだろう。
額の方にも火傷は侵食していて、それは前髪で隠しているようだ。
「醜いとは思わないけどな」
「…カッコ悪いだろう?」
「カッコ悪くもない、カッコいいわよ?」
「…ありがとう」
「ねぇ…キスしてもいい?」
「いいよ」
前髪を掻き分けて、目蓋に触れるだけのキスを繰り返した。
火傷跡にまんべんなくキスを落として。
そうしていたら彼に抱き締められた。
「ん?」
「愛しているよ…」
「うん、私もよ?光忠…愛してる」
「布団を敷こうよ、なんだか君を抱きたくて仕方ないんだ」
「ふふふ、うん」
彼は私から離れて布団を敷くと、微笑んで手招きする。
「たっぷり啼かせてあげるから」
「楽しみにしてる」
まだ夜は更けていく。
たまには眼帯のない彼もいいな、そう思いながら口付けにのめり込んだ。

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