雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 実力派の紫-03-


「そういえば、私に何か御用でしたか?それにそれは……。」

赤くなった顔を手でぱたぱたと扇ぎながら、俺の手元にある大量の書類を見て滝夜叉丸は不思議そうに聞いた。

『ああ、これはな…。小松田さんがな、……そう小松田さんが…。』
「……それはご愁傷さまです。」

先刻のことを思いだし、遠い目をした俺に滝夜叉丸は察しがついたようだ。ふと彼も身近にいる厄介人を思いだのしたのか苦笑を溢した。俺らお互い苦労人だよな。
おおっと、気を取り直して仕事仕事。大量にある書類の中から数枚の書類を滝夜叉丸に差し出す。

『これ滝夜叉丸に渡そうと思ってな。』

はいっと渡せば、滝夜叉丸はその書類の中身をチェックしだした。

『本当は体育委員会の顧問・厚木先生に渡さなければならないんだけど、厚木先生は今日の午後まで出張だし、俺は午後から出かけるし渡せないからさ。』
「わかりました。そう言うことでしたら 私から厚木先生に渡しておきます。」
『良かった。ありがとう。』
「あれ?待ってください。何故、私に渡したのですか?七松先輩に渡せば……。」

ああ、そのことか。確かに体育委員会の委員長は小平太なんだけどなあ。
学園内にいなかったし、それに渡しても書類を無くしそうだ。そうぼそっと呟けば滝夜叉丸には聞こえてたらしい。そして思い当たる節があったのか、はははと乾いた笑みを浮かべてた。

本当に苦労してるよな。
小平太の暴走につき合わされて、次屋の迷子防止、さらには時友と金吾の面倒を見なくてはならない。
うーん、俺以上大変だな。

『滝夜叉丸は小平太より余裕でしっかりしてるし、責任感も強い。俺はお前のことかなり頼りにしてるよ。』
「!っはい!!」

いつも大人びている滝夜叉丸も俺の言葉に嬉しそうに笑う顔は年相応で。ああ、どんな表情よりもその笑顔が1番よく似合うと俺は心底思った。



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