僕の隣にいてください-01-
ふうっと一息ついて背筋をぐっと伸ばす。
『んー、疲れた。』
今日で徹夜何日目だったけな、と頭でひぃふぅみぃと数えていく。
あ、5日目か。
どおりで頭がガンガンするわけだと1人うんうんと頷き納得した。
忍務で3日寝てなくて、帰ってきても小松田さんがいつもより盛大に仕事を増やしてくれていたので片付けるのに寝ずに2日かかった。
うーむ、そろそろ限界だ。
このまま寝てしまいたい。
ごろんと事務室で寝転がれば襲ってくるのは5日分の睡魔。もちろんそれに敵うはずもなく瞼が落ちていく。
が、
『……あ、忘れてた。』
作法委員長である仙蔵に渡す書類をまだ持っていってないことに気づいた。
あー、もう。
やっと寝れると思ったのに。
でもこれが俺の仕事なので、渋々ながらもよっこらせと立ち上がった
こんこんっと作法が使っている部屋の戸を叩く。
「おやまあ。蓮夜さんじゃないですか。」
がらっと開いた戸からひょっこり顔を出したのは喜八郎だった。
仙蔵はまだ来てないみたいだな。
「もしかして僕に会いに来てくれたんですか?」
『何でそうなる。』
無表情で話す喜八郎に軽くずっこけそうになる。
言った本人は俺の素早い突っ込みに「なぁんだ違うんですね。」と呑気に返す。
本当にマイペースだな喜八郎は。
『仙蔵に用があったんだ。でもいないみたいだからまた出直すよ。』
ぽんっと頭に手を乗せれば、喜八郎は俯いて黙った。
俺はその様子に頭に?を浮かべたが次の瞬間、喜八郎が書類を持っていた方の手をぐいっと引っぱた 。
『うおっ!?』
普段ならそれぐらいでバランスは崩さないのだが、今は別。
眠たくて眠たくて仕方がなかった俺は案の定バランスを崩して喜八郎の肩に顔から突っ込んだ。
「蓮夜さんしばらく寝てないでしょう。うっすらだけど隈できてますよ。」
『え、まじか。……じゃなくてー、何するんだよ喜八郎。』
俺は喜八郎の胸をとんっと押してもとの体制に戻る。すると喜八郎は少しぶすっと膨れた。何でだ。
「立花先輩が来るまでここで仮眠をとったらどうですか?僕が起こしてあげますよ。」
『ふぅむ…。』
酷く眠いのも事実だし、事務室に戻ってまた来るのも多少なりともめんどくさい。
どっちみちこれ以外の仕事はもう無いんだし。
『なら、お言葉に甘えようか。』
喜八郎のあとに続いて部屋に入って、隅の方で壁にもたれて座る。
何故かすぐ隣に座った喜八郎に内心首を傾げたが、今はそんなことは気にならない程俺は疲れていた。
『喜八郎ぉ。俺、本当に……寝るからなぁ…。』
最後に喜八郎に一言断って俺の意識は夢へと旅立った。
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