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約束*三木ヱ門のバヤイ-02- 三木ヱ門side

私が点火すればユリコは勢いよく火を上げ弾丸を発射し轟音を辺りに響かせる。

発射された弾丸は的にほぼ狂いなく当たっていく。

まあ、それはいつも通りの訓練の光景なのだが、今日はユリコを挟んだ向こう側に蓮夜さんが居ることがいつもと違う。

訓練に集中しているはずなのに、どうしてもちらちらっと視界の端に写る蓮夜さんの横顔に私はどうしても気をとられてしまっている。



用意していた最後の砲弾が的に確実に当たったところで、蓮夜さんが顎に手をあてて目を閉じ何かを考え始めた。

『んー、……すごい正確に的には当たってるんだけどなぁ………。』

しばらくして、蓮夜さんは今まで閉じていた両目をぱちっと開けて俺をじっと見た。

『今日はあまり集中出来てないだろ。違うかな?』

図星だった私はその言葉にドキッとしてしまう。何故わかったのだろう。

全ての砲弾は正確に的に当てたし、ばれないようにあまり蓮夜さんを意識してなかったはずなのに。

『ふふ、図星か。何が原因だ?良ければ聞くが。』

優しく笑ってこちらを伺う蓮夜さんには申し訳ないが、そんなことは言えない。

だって貴方の横顔が凛々しくて美しくてかっこよくて………。それに見惚れてたなんて言えるわけないでしょう?

困ったように笑えば、蓮夜さんは私の頭に優しく手を乗せた。

『言いたくないなら無理に言わなくていいさ。』

「……すいません。」

『いいって、いいって。』

なでなでと頭を撫でる蓮夜さんに対して赤面してしまい、思わず俯いた。
きっと頭を撫でるのが癖なんだろうなぁ…。

『あっ、そうだ!』

ふっと頭を撫でるのを止めた蓮夜さんに私は顔を上げて首を傾げた。

「どうしたのですか?」

『最近、ユリ子の砲弾変えたよな。』

「はい。」

しかし砲弾を変えたのを知っているのは火薬委員の面々だけなはずなのに。

『飛距離も破壊力も微妙な差だけど前に使っていた方が上回っていた。戻した方がいいかもね。』

「本当ですか!?気づかなかった……。」

『わからない程の差だと言うことだ。でもそれが実践では生死を分けるからね。』

にこっと笑って話す蓮夜さんに私は流石だなあ、と尊敬する。
だがここで小さな疑問を感じた。

前の砲弾はまだ蓮夜さんの前で披露した事が無いはず。訓練でも実践でも。

「どこで見たんですか?」

『あっ、……。』

ぽつりと呟けば蓮夜さんはしまった、と口に手をあてる。
じいっと見つめていれば照れたように頭をぽりぽりと掻いて口を開いた。

『あ〜〜…そのな、見てたんだよ、こっそり。鍛練してるところを。』

「へっ?」

『三木ヱ門から頼まれる前からさ、みんなの鍛練をこっそり見て回ってたんだよ。少しでもアドバイスか何かをできるかなって。』

その発言に私は驚きのあまり口を開けてぽかんとした。

『あ、みんなには言うなよ!?こっそり覗き見してるなんて恥ずかしいからな///』

顔を真っ赤にして必死に話す蓮夜さんに思わず吹き出して笑ってしまう。

「ふはははは」

『あ、ちょっ、笑うなって!』

笑いすぎて少し見尻にたまった涙をぐいっとこすれば、蓮夜さんはまだ顔を赤くしたままそっぽを向いている。

「く、ふふふっ……。ありがとうございます。笑ってしまったけれど、すごく感謝してるんですよ?」

こんなに私達のことを見ててくれる貴方がいて、こんなに貴方に想われて。
その気持ちが誠意がとても照れ臭くて、咄嗟に笑って誤魔化したんです。

「これからも見てて下さいね。」

私はいつか今の蓮夜さんに追いつきます。でもその時は貴方はまたその先を行っているんでしょう?
だからいつまでも追いかけさせて下さい。


私の尊敬する人は照星さん、そして蓮夜さん…貴方です。


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