雲外蒼天-天女編- | ナノ


▼ 変化した日常-04-


料理をしながらもおばちゃんを盗み見る。その手際の良さには相変わらず感動してしまう。俺だって元は女だったけど、おばちゃんには到底及びそうにはないなあ。
だいたい料理が出来上がってきたとこで近づいてきた気配に、俺は料理の手を止めておばちゃんの方を振り返った。

『そろそろ生徒が来ますね。こっちは出来ましたよ。』
「私の方もだいたい出来上がったわ。盛り付け頼めるかしら?」

いいですよ、と返事をしてからとりあえず今から来るであろう人数分の料理を用意する。
いや、しかし本当に美味しそうだな。つい先程おにぎりを食べたばかりなのにお腹が減りそうになる。まあ、4日間食べてなかった胃がこれ以上の食事を簡単に受け付ける訳がないけれどさ。

「あら、今から来るのは6人なのね。蓮夜くんがいればみんなが来るタイミングも人数も先にわかるから助かるわねえ。」
『ふふ、気配を読むのは得意ですから。』

俺が用意した皿を覗きこんだおばちゃんと小さく笑いあってると、食堂の入口から眠そうな声が聞こえた。

「「「おはよーございまーす。」」」

まだ欠伸を噛み締めながら現れたのは、3年生の6人組で。俺は、いつの間に朝一番がこの子達になったのだろうと考えた。前は5・6年生がだいたい朝一番だったのに。

「「あ、蓮夜さんだ!」」
「おはよーございます!早いですね。」

俺を見たとたん、先程より元気な声を出してくれた彼らに俺は頬が緩んだ。やば、お兄さん一気に癒されたわ。

「蓮夜さん、昨晩はありがとうございました。お一人で薬の調合をさせてしまって……。」

みんなより一歩前に出て俺に頭を下げた数馬に、俺は頭を撫でた。本当に礼儀正しい子だな。天女様よりもはるかに年下だと言うのに。

『全然大丈夫だよ。ちゃんと夕餉は食べれたか?』
「はい!蓮夜さんもちゃんと食べました?」
『ふふ、食べたよ。』

優しく笑えば数馬はなんとなく納得したみたいだった。こういうことは数馬は察しがいいからね。気を付けないと。おばちゃんはと言えば、俺の嘘がわかるからこそ困ったように眉を寄せた。でも言わないでいてくれるのは有難い。下級生に心配はさせたくないからさ。

『ほら、みんな早く持っていきな。冷めるぞ。』

人数分の朝餉を出せば、みんなそれぞれに持って食卓につく。そして全員で手を合わせてご飯を食べ始めた。

学年ごとで食事をするのはごく普通で珍しくない風景なはずなのに、何故か俺は胸がキュッと締め付けられた気がした。


変化した日常
(この間までの普通が今では珍しくて。)



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