...あの時...?
チュッ、ピチャ...チャッ...ペチャ...ペチャッ...
蜜を絡めながらわざと大きな音を立てて、蕾を、秘所を、舐め回す。
「あああああっ」
気持ち善くて、もどかしくて、もっと、もっと、と腰が揺れる。快楽に従順すぎる私の身体。浮かんだ疑問はいつだってこうして沈む。
「ふ、善さそうですね」
「ううっ、ああっ...は、ぁぁぁ...あっ、あっ、あっ...」
間違いなく快楽を貪っているのに、いつまでも欲しいと言わない私に業を煮やしたのか、クラウスがサッと体を離した。
「ん、ふっ...」
突然後孔の指が引き抜かれ、浅ましい声が出る。
「今日のところは諦めますか。でも、徐々に慣らさないといけませんから」
...慣らす?
「うぁっ!」
何かが後孔にあてがわれ、指とは違う冷たくて硬い無機質な質感に、一瞬呼吸を忘れる。
「ちょっ、痛…抜い......っ」
ささやかな抵抗も虚しく、ゆっくり射し込まれるディルドが、すぼまった筋肉を力任せに拡げながら根元まで埋め込まれた。
「今度こそ逃しませんよ...」
「んぁあっ!!」
待ち望んだ秘所に先走りの滴る男根を突き刺され、あまりの質量感に喉を仰け反らせて、喜びで全身を震わせる。
「ぁぁぁぁぁぁ、あ─────」
「あーあ、ものすごい喘ぎですね。ん、裡がヒクヒクしてますよ?また挿れただけで達しましたか」
なんて嬉しそうな顔。そんな顔をされたらねだってしまいそうになる。そうしてしまえば楽になることは分かっているのに、そうしてしまいたいのに、何かが私をそうさせない。だけど...
「あ...あ...」
もっと。もっと、欲しい...よぉ...
「どっちが獣ですか。そんなに欲しかったのなら、一言挿れてと言えば良いものを」
「はぁっ、あぁっ、あああ...あ、あ、」
言葉にしないだけ。口に出来ないだけ。私は、欲しくて堪らない。
子宮口を嬲るように抉られて、あられもない声が、荒い呼吸と共に押し出される。痛みすら快楽。涎が、涙が零れ、それは静かにベッドに吸いとられてゆく。
バチン、バチンッ
「あ。」
絶頂に向かう途中で手足が解放され、緩やかに押し上げてきていた波が、引き戻される。
「おや、どうしました?不服そうですね」
それは不服ではなく不安だった。いきなり手足の枷を失って、無理矢理白い世界から引きずり下ろされた、不快な浮遊感。
クラウスは、すっかり赤く痕が付いて擦り剥けた手首に口付けを落としながら枕を取り、だらしなく拓いたまんまの足を肩に担いで腰を動かした。
最奥を貫いたまま軽く揺さぶられるだけで、過剰な程に感じて甘い声が漏れる。
「ん──────っ...はぁっ...ああっ...」
「いい表情ですね、贔屓さん」
「ぁう…っん、ぁぁっ…はぁ…あっ」
クチュゥ......。クチュゥ......。
「ココも私の形に馴染んできたんじゃないですか?」
ゆっくり、ゆっくりと腰を動かされ、快楽に虚ろな目で天井を見つめながら、分からない…と呟く。
「ああ、いいですね、本当に、いい」
「あっ、あっ、あっ......ふぅぅ、んぁぁぁ」
じ...らさないで...
「でも、まだ足りません。狂ったように善がって、泣いて懇願するほどに堕ちた姿が見たいんです。今日のところはまた私の負けですが」
負け、は、私...
「はぁぁ...あぁぁ...」
気持ちいい...。他の全てがどうでも良くて、もっと、もっと、あの高いところに行きたくて、恥骨を擦り付ける。
息が、出来ないの...気持ち善すぎて...
「はぁっ、...ははっ。まるで溺れてるみたいですね。いえ、溺れているのは私ですか」
あなた相手だと全く自制が利きませんと苦笑うクラウスの親指が、赤く剥き出した蕾を捏ねる。
「ぁあ!あっ!はっ...はあっ、あ、あ、」
繋がった部分を熱に浮かされたように凝視する、その視線にも感じて。
ヌチュッ、ニチュ、ヌチュッ、ヌチャッ
羞恥を誘うこんな淫猥な音にすら酔わされる。
ヌチ、ヌチッ、ニチッ
あの苦笑、その視線、私は、知っている気がする...。
ややクラウスの動きが早まると、波に呑まれるように思考が薄れて、私もそれに合わせて腰を揺らす。少しずつ喉が仰け反って、息継ぎのような呼吸だけで高みを目指す。
「もう私が限界です。ほら、一緒にイキましょうか」
ビクビクと下半身が痙攣のように小刻みに震えて、絶頂が近いことを知らせる。菊座に挿したままの玩具が揺れる。
熱く、湿った空気と、肌のぶつかる音、濃度の増した粘液が混じり合って発てる音、それに二人の荒い息。首筋に吸い付いて、クラウスは紅い証しを残す。
「あ、も、ん........あ、────────!」
「贔屓さんっ.........くぅぅっ!!」
「────んぅっ...はぁっ...」
クラウスにしがみついて、ヒクヒクと最後の一滴までも搾り取るように収縮する贔屓の中を存分に堪能して、クラウスは自身を引き抜いた。出来ることなら己が萎えるまで贔屓の中に居たかったが、数回胸を上下させると気を失うように眠った彼女に過去にも味わった甘い痛みが甦って、すぐにでも勃起しそうな予感に苦笑することで理性を保った。さて、バスルームにお連れしましょうね、私の可愛い贔屓。
ガンガンガン!!
うつらうつらしているところを、騒音によって覚醒させられた。
クラウスの城はいつでもとても静かだった。これだけ大きくて立派なお城なんだから他にも人はいるんだろうけど、ドアの外からは全く音が聞こえない。聞こえるのは時折開かれる窓の向こうで岸壁に打ち付ける波しぶきと鳥の声。クラウス自身も物静かで、私もほとんど喋ることがなかったから、行われていることは狂気以外の何物でもないけれど、不思議な穏やかさに包まれた日々だった。
バンッバンッ!
五月蝿いな、と思っていると、自分の名前が聞こえた。
「贔屓っ!どこだ贔屓!!」
複数の足音が近付く。
「贔屓!」
激しくドアが開けられて、派手な大男が私の名前を呼びながら側に駆け寄ってきた。
あれは...
[ 5/7 ][*prev] [next#]
novel top