「・・・・・・と、出発したのは良いものの・・・」
桃太郎(仮)は道に立ち止まって、首を傾げていました。
目の前にはそれはたくさんの別れ道があります。
ふと近くにあった立て札を見ると『運命の分かれ道☆あなたの行きたい場所はど〜こ〜?』と書いてあります。
「・・・・・・どこって場所を聞いてるくせに、どの道を通ったらどこに着く、とかの標識が無いのは何でなの・・・」
桃太郎(仮)は鬼ヶ島までの道を知りません。
何せ、何の説明もされないまま、いきなり箱詰めにされたのです。
こんなに別れ道を作られても困ります。
「うーん・・・どうしよう・・・」
「「きゃー!」」
「ん?!」
どの道を通れば鬼ヶ島まで行けるのかと悩んでいた桃太郎(仮)。
どこからか、女の子の悲鳴が聞こえてきました。
慌てて声のしたほうに走って行ってみると・・・・・・
「きゃぁー!」
「はひー!」
「ガハハハ!!雷小僧だじょー!!」
見ると妖怪“雷小僧”が2人の女の子を襲っているではありませんか!
「はひー!プリティーです!」
襲っているでは・・・・・・
「お名前なんて言うの?」
・・・襲って・・・・・・?
「・・・・・・いや、どうみても一緒に遊んでいるだけだね」
・・・いませんでした。
あの“きゃー”は悲鳴ではなく歓声でした。
全くもって紛らわしい。
「こら。勝手に勘違いしただけなんだから、女の子達に当たらないの!!」
常に女性に優しく!を心掛けている桃太郎(仮)はナレーションにまで注意します。
「あれ?あなたは誰ですか?」
「とってもビューティーなガールです!!!」
「あ、私は璃真・・・・・・じゃなくて、桃太郎(仮)。あなた達は?」
「私は京子です!」
「ハルと申します!」
「オレっちはランボさんだもんね!」
「さっき桃が流れてきて、割ったらランボ君が出てきたの」
「あれ・・・もしかして本物の桃太郎?
あ、桃太郎じゃなくて雷小僧だったっけ?」
桃太郎(仮)は、うんうんと1人で納得して、再び女の子達に向き合いました。
「2人はこの近くに住んでるの?」
「はい!すぐそこにある並盛村に住んでますよ!」
「あ、じゃあ聞きたいことがあるんだけど・・・」
「何ですか?」
「鬼ヶ島までの行き方ってわかるかな?」
桃太郎(仮)がそういうと、京子とハルは目を丸くさせました。
「は、はひー!!!そんなデンジャラスな所に何しに行くんですかっ?!」
「ちょっと鬼退治に」
「危ないよ、璃真ちゃん!!」
「あ、京子!璃真じゃなくて桃太郎(仮)!」
「あ・・・・・・えっと・・・
危ないよ、桃太郎(仮)さん!」
わざわざ言い直した京子ちゃんが大変可愛らし・・・・・・ゴホン。
「でも、行かないと話が終わらないからねー」
「あ、そっか・・・」
「大人の事情ってやつですね!!!」
ちょっと違う気もしますが、とりあえず、鬼ヶ島までの道のりを村の長老に聞くことにしました。
京子とハルに案内され、桃太郎(仮)は村長のお宅に行きました。
「村長さーん!!お客様ですー!!」
一軒のお宅の戸を叩きながらハルが言うと・・・
「はーい!」
呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!!
現れたのは栗色の髪の可愛らしい少年でした。
「え?フゥ太君が長老なの?」
「そうだよ、璃真姉。僕まだ10歳なのに!」
「だよね・・・てっきり9代目だと思ってたのに」
「イチゴが馬鹿だから、いろいろとミスキャストなんだよ〜・・・。
璃真姉に似合うおとぎ話の役ランキングでは、お姫様系が1位なのにさー」
「・・・そうなの?ボンゴレの姫とかけてるのかな?」
相変わらず無自覚な桃太郎(仮)。
「あ、そうじゃなくて。私、鬼ヶ島への行き方を聞きに来たの!」
「わかった」
村長が返事をしたと同時に、周りのものがふわりと浮き上がりました。
「わあっ!」
「はひっ!」
「あー浮くの久しぶりだなぁ・・・」
もちろん、桃太郎(仮)達も例外ではありません。
重力に逆らってふわふわと揺れています。
「こちらフゥ太、ランキング星、応答せよ」
村長の目に宇宙が見えるのは気のせいではありません。
(確かめたい方は5巻、標的34、35、他まで)
「鬼ヶ島への道、全18通り中、桃太郎(仮)さんに一番合った道は・・・・・・」
・・・・・・道に合う合わないってあるの?
「ルート27だね」
「ちょっと待った!!さっき道は全部で18って言ってなかった?」
ようやく地に着いた足で村長の方へ。
「そうだよ。ルートはNo.4〜8、16〜28なんだよ」
「なんでNo.4から始まるんだとか、9〜15はどうしたんだとか、いろいろとツッコミたい所なんだけど、その中であえて27を選んだ理由は?」
「それは、イチゴがどうしても使いたかった数字だからだよ。
ちなみに18も」
ただ、使いたい数字だったのです。18も!!
「そんな理由・・・」
「また“大人の事情”?」
「これは違うと思うよ、京子」
ただ、使いたい数字だったのです。
「璃真姉・・・じゃなくて、桃太郎(仮)さん!!きっとこの先に素敵な出会いが待ってるよ!!頑張って!!」
「うん、ありがと!!」
何はともあれ、村の人々に別れを告げ、桃太郎(仮)は鬼ヶ島へルートNo.27で向かうことにしました。
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