むかーし昔、ある所に。お爺さんとお婆さんが住んでいました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
「ちょい待ち。何で王子がジジイ役なわけ?芝刈りとか有り得ねーし!」
「それなら、何で私がお婆さんなのよ!!だいたい私、あなた知らないんだけど?!
初対面でいきなり熟年夫婦やれって!!?」
「知るかよ。だいたい、オレは姫が出るっつーから・・・」
「あら、私もよ。璃真が出るって言うから・・・ああ、もう!
とりあえずナレーション通りにしましょ!早く璃真に会いたいし」
「同感。
んじゃ開匣“嵐ミンク”!」
「ちょ、それ(匣)はダメなんじゃ・・・。
管理人、まだ未来編書いてないわよ?」
「管理人とか知らねーし。とりあえず、山燃やしたら、芝刈り行かなくて済むだろ」
言うより早く、山はどんどん遠慮なく燃えていきます。
「ねぇ、環境破壊って言葉知ってる?」
「あー、そのセリフだめだって。カエルが言う予定だから」
「え、カエル(ry」
ただ山と川に行くだけなのに、いつまでもダラダラと喋っているお爺さんとお婆さん。
めんどくさいから、お婆さんが川についたことにします。
「ししっ、めちゃくちゃ端折ってんじゃん」
「端折ったわね」
(無視)
お婆さんが川につくと、もう日が傾き始めていました。
「あら、ならもう洗濯出来ないわね」
と、そこに。
どんぶらこー、どんぶらこー、と、大きな桃が流れてきました。
「よっしゃぁぁ!あの中ね?!あの中に可愛い可愛い璃真が!!!」
お婆さんはバジャンと川に飛び込み、流れてきた桃を抱きかかえ、大急ぎで家に帰りました。
お爺さんも嬉しそうに後に続きます。
しかし、桃を持って帰ったのは良いものの、包丁を持つお婆さんの手は酷く震えています。
もともと名家のお嬢様なお婆さん。
料理など、ほとんどしたことが無いのです。
「震えすぎ。貸してみ。中の璃真を傷つけるわけにいかねーし」
一方、ナイフさばきは、お手の物なお爺さん。
お婆さんから包丁を受け取り、綺麗にスパンと切りました。
すると、
「ガハハハハ!ランボさん登場だもんね!
主役はオレっちのもの!」
ガハハ、と中から元気な男の子が出てきました。
「「・・・・・・・・・」」
見ていて無性にムカつくのは何故でしょうか。
パタン。
「川に流して来るわ」
「オレ、桃にくくりつける縄と岩、用意する」
お婆さんは割れた桃を無言で閉じて、お爺さんは縄を持ち、再び川へ向かいました。
ランボを捨て・・・・・・ゴホンッ。
桃を自然に返した後、2人はすっかり暗くなってしまった道を歩いていました。
「ん?」
そのとき、お爺さんはふと目の端に何かをとらえました。
視線をそちらへ向けると、竹藪の中、何やら明かりが見えます。
近づいてみると、なんともと光る竹なむ一筋ありけるではありませんか。
「・・・!なーる。姫は、かぐや姫ってか」
「確かに桃で流されてくるなんて、マヌケだしね!」
お爺さんとお婆さんは、うんうんと頷きました。
彼らが期待している“璃真”は、兎に角、可愛らしい姫なのです。
例え作り話でも、桃なんぞから産まれるはずがありません。
まぁ、竹から産まれるのもどうかと思いますが。
それは一先ず置いておいて、お爺さんは、早速その竹をスパンッと切りました。
「り───・・・」
「クフフフ。僕をこんな所に押し込めるとは、良い度胸ですね」
嬉々として竹の中を覗き込んだお爺さんとお婆さんですが、中に居たのは予想に反して、フルーティーな出で立ちの少年でした。
「あら不思議。こんな所にガムテープが」
「オレが竹持つわ」
お爺さんが竹を繋ぎ、お婆さんはグルグルと、テープを何重にも巻きました。
「ちょ、待ちなさい!何ですこの仕打ちは!!?」
「腹減ったな」
「僕を無視するとは良い度胸ですね!」
「デリバリー頼む?」
「だから待て!」
フルーティーを無視して家に帰った2人。
ピザを頼み、簡単に夕飯を済ませました。
「結局、璃真が登場しないまま、1日終わっちゃったわね・・・」
「明日来なかったら王子帰るから」
「私だって!璃真がいない話なんて、生クリームの無いショートケーキだわ」
「いや、ボスがいないレヴィだろ」
よく分からない例え話に花を咲かせる2人。
こうしてして夜は明け、次の日になりました。
ピンポーン・・・
正午を少し過ぎた頃、誰かがインターホンを押しました。
こんな山の中、珍しい来客です。
「誰だ?」
「まさか璃真?こんな登場ありなのか分からないけど・・・」
2人が戸を開けると・・・
「うおぉぉっ!!極限に宅配だー!!!」
極限なお兄さんが立っていました。
それはそれは、大きなダンボール箱を抱えています。
そう・・・
まるで、人が1人、入っていそうな。
「え、嘘・・・!?ちょっ、まさか“そんな”登場なのっ!!?」
「ししっ。まさかの箱詰め?」
「笑い事じゃない!早く家の中に運んで!」
「王子に命令すんな」
そう言いながらも、お爺さんはそのダンボール箱を、居間まで運んであげました。
慌てて箱をあけると・・・
「嫌ぁぁぁ!!!私の璃真がぁぁ!!!!」
ロープでグルグル巻きにされた少女の姿が。
口にはガムテープが貼られています。
「あ、送り主、アルコバレーノじゃん」
「あんのクソガキが・・・!!」
しかし、文句を言う前に、少女に巻かれた包帯を解いていきます。
「た、助かったぁ・・・」
箱から出た少女に、お婆さんはギュッと抱きつきました。
「無事で良かったわ!!」
「愛羅!あ、じゃなくてお婆さん?えっと、私、鬼退治に・・・」
「「行かなくて良い!」」
「でもほら、管理人のイチゴが、行かないと困るみたいだし・・・」
「璃真・・・!何て優しいの!あんな駄目管理人の為に・・・!」
「ほっときゃ良いじゃん。王子の相手しろよ」
「そういうわけにも・・・・・・。あと都合上、名前は“璃真”じゃなくて“桃太郎”になってるから」
「も、桃太郎!?なんてダッサイ名前・・・」
「つーか、姫は桃から生まれてねーじゃん」
「あー・・・じゃあ、桃太郎(仮)ってことで!とりあえず、行ってくるね!」
「王子のナイフ貸してやるよ。鬼退治したら、ちゃんと返しに来いよ?」
「ありがと、お爺さん!あ、きび団子ある?」
「きび団子は無いわね・・・。代わりにナミモリーヌのケーキでも良い?」
「・・・何でも良いや」
桃太郎(仮)は、日持ちしなそうだなぁ・・・と思いながらも、お爺さんとお婆さんに別れを告げ、旅に出ました。
ボンゴレの姫で桃太郎パロ1
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