捻くれ者な彼と純真な彼女 嘘ばつく奴は信用出来んと。嘘ばつく事で悲しむ人がおる事ば考えん自己中心的な奴なんか特にったい! それってボクの事を言っているのかな? あんた以外に誰がおると!? 世の中には一杯居るさ。それこそ腐る程にね。逆に君みたいな純真な子の方が少ないくらいさ。 そげんこつなか!なしてそげな捻くれとう目で物事ば見んの! これが世間の標準なんだよ。…ねぇ、それよりも信用出来ないって事はボクの言葉を信じてくれてないの? 当たり前ったい!あんたみたいな大嘘つきの言葉なんて信じられん! じゃあ、信じて貰える様になるまで何度でも君に愛の言葉を捧げよう。 気色悪か! どういう意味さ!
男なんて皆、そう。 ちょっと優しくしてあげただけで直ぐに舞い上がって、つけ上がるんだから。 本当、可愛いわよね。 ……誰もがそうとは限らないと思うんだが。 あら、冷めた男ね。 可愛くない。 可愛くなくて結構。 でも、アタシ。 貴方みたいな冷めた人、好きよ。 オレはお前みたいな女は好きになれん。 本当、酷い男ね。
おや? 貴方、この街では見ない顔ですね。 ああ…どうりで。 この街に訪れたばかりだと言うのなら納得だ。 ではこの街の住人となる貴方に私からこの「街」について、語らせて頂くので、ご拝聴お願い頂こう。 まずはこの「街」と言ったが…この「街」は「街」でもあり、「国」であり、別の言い方をするならば「異次元の交差点」とも呼ばれる「場所」である。 名称等いくらでもあるが、それでは何かと不便だからな。 この場所を「sick」と住民は呼んでいるよ。 私はその名が余りにもこの「街」に相応し過ぎると思うがね。 うん? 何故相応しいのかって? それはその名前があの街そのものを現しているからさ。 sickとは病だ。 この街では病を抱えた人間が住んでいるのだ。 この街は一つの大きな病院とも言えるだろう。 そしてこの街自体が病を抱えているとも言える。 街と人。 その二つが存在してこそこの「場所」は、この「国」は、この「異次元の交差点」は、この「街」は成り立つのであるから。 意味が分からない? 確かにそうだろうな。 だが、直ぐに解る時が来る。 君も、この街に訪れた人間なのだから。 さて、もう一つ。 私の話を素直に聞いてくれた君に餞別を捧げよう。 この街の住人はね、特徴があるのだよ。 それは共通した物ではないが、ある住人達に関しては共通していると言えなくも無いかもしれない。 色と宝石。 特にこれには気を付けたまえ。 赤い色は闘志の病に。 緑の色は成長の病に。 青い色は猜疑の病に。 黄色は癒しの病に。 金と水晶は鏡の病に。 銀の石は憎悪の病に。 紅と藍は恋の病に。 翠の石は孤独の病に。 白金と真珠と金剛石は依存の病に。 この病を抱えた住人に魅入られる事なかれ。 引き込まれたら最後。 君は彼等から逃げる事は叶わない。 ん? 何だね? 私か? 私の名は特に無い。 ははは。 ふざけている訳では無い。 本当に無いから好きな様に呼んでおくれ。 名無しでもゴローでも通りすがりでも。 ほう。 匿名ときたか。 それはそれで面白い。 うん? まだ質問があるのかね? 何故、先程餞別と言ったのか? それは私と貴方がもう逢うことが無いからさ。 何せ私は貴方と違ってこの街に訪れるべくして訪れた人間ではないのだから。 それではそろそろ別れの時だ。 貴方の健闘を祈る。
薄暗い部屋の中で一人の少女が佇んでいた。 カーテンは開いているが、窓には鍵がかかっている。 開かれていない窓から月明かりにより、小柄な少女がぼんやりと照らされた。 漆の様に黒い髪は枝毛の一つもなく、艶のある艶を煌めかせており、それとは正反対な白い肌がより一層相反する二つの色彩を際立たせた。 ぽたり。 フローリングに水が落ちる。 ぽたり。 ぽたり。 キラキラと光る水が小柄な少女の小さな顎を伝ってフローリングに小さなシミを作った。 「…み、くん」 ゆっくりと少女が腰を下ろす。 自分の身体を護る様に抱え込んで。 「御狐神君…」 ふるふると少女の身体が震えた。 否、震えたのは身体だけではない。 その小さな唇も震えて、わなわなと震えた唇から紡がれる言葉も震えているのだ。 「御狐神君…っ、御狐神君…!」 滴る涙はどこまでも透明で、狂った様に一人の男の名を紡ぎ続ける少女の声に返事をする者はここには居ない。 「みけつかみ、くん」 解っていても少女はその名前を唱える事を止められなかった。 『はい、凛々蝶様』 「御狐神君」 あの声を聞く事はもうない。 「御狐神君、僕は」 決別の時は近い。 「僕は君が、君の事が大好きだった」 君は僕を好いてくれた。 こんな、僕を。 「だから、もう」 守れなくてごめんなさい。 今度は僕が君を守る。 「さようなら、だ」 明日、君のお墓参りに行こうと思う。 その時に僕は君とのお別れをするだろう。 そうして君を、君達を悼んだ後に僕は今の御狐神君との関係を終わりにする。 そして現在に向き合うだろう。 百鬼夜行を解明する為に僕は覚悟を決めた。 そんな僕をどうかー… 許さないで欲しい。
side Ruby ねぇ、キミは気付いているのかい? ふとした瞬間にボクが漏らすあの時の事を指す様な呈示するかの様な言葉を。 その言葉の意味を。 何故、そんな言葉を口に出すのかを。 キミはいつも「あん時のこつ、覚えとっと?」と繰り返し、繰り返し聞いてくるけど、その度にボクはキミに明確な返答をする事を避けてはぐらかすけど。 本当にキミは気付いてないの? 何故ボクがキミに曖昧な態度をとり続けるのか。 どうして、キミに過去を、あの時の事を、覚えているかの様な言葉を向けるのか。 もしもボクがキミとの過去を無かった事にしたかったら、ボクはそんな危うい行動は取らないよ。 危ない綱渡りなんてしない。 それなのに、どうしてボクがキミにあの時の事について示唆する台詞を吐き、危うい綱渡りを渡り続けるのか、それの意味する事をサファイア、キミは本当に分かっているのかい? (妙に聡いキミはボクの本心を) ねぇ、分かっているの? side Sapphire あんたは、存外お馬鹿さんやね。 色んなこつば複雑に考えとって、混雑した思考にがんじ絡めになって身動きが取れなくなっとう。 もっと、単純に考えれば良かやのに。 そげに複雑に考えんで良か。 遠回りせんでも良か。 もっと単純で良かよ。 そういえば、あんたは分かっとうとか? あたしがあんたから贈られる服ば受け取る理由ば。 もしもあんたがあたしがあんたに「きっとキミに似合うと思う」っち言われるのが嬉しくて、それだけで受け取っとると思っとうなら、それは大間違いとよ。 あたしがあんたから貰った服ば着とる理由、あんたはほんまに分かっとる? いつも、胡散臭か笑顔ば浮かべとるけど、へらへらした笑顔の裏なんてあたしには読めんけど、やけどあんたやってあたしの気持ちなんて分からんでしょう? (曖昧なあんたは結局) なーんも分かっとらんったい!
突然ですが。 ゴールドが湖に落ちました。 「ちょっ…、ゴールド大丈夫!?」 「………」 クリスタルが悲鳴を上げて、シルバーが無言で膝をつき、湖を覗き込みます。 その悲鳴に呼応する様にブクブクと湖からバブル光線の様な泡が沸き上がりー…それは綺麗な女性が水面から表れました。 波打つ様なウェーブのかかった長い髪の毛は淡い水色をしています。 肌の色は白、彼女の全てを見通すかの様な透明な瞳はアメジストの様にキラキラと輝いていました。 全体的に淡い色素を持つ彼女の薄い唇がそっと開きます。 「ー…貴方達が落とした少年は『賢いゴールド』ですか?それとも『親切なゴールド』ですか?」 彼女がそう問い掛けるのと同時にブクブクと泡が沸き上がって、二人の少年が登場します。 右方向に佇むのが『賢いゴールド』です。 彼は「ポケモン勝負はタイプです。相性です」と口ずさみ、ポケモンについての本を何冊も抱えていました。 左方向には『親切なゴールド』が佇んでいます。 彼は見知らぬお婆さんを背負って荷物まで持ってあげていました。 どちらの『ゴールド』もクリスタルとシルバーの知っている『ゴールド』ではありません。 彼女達は正直に答えました。 「「違います」」 クリスタルとシルバーの正直な答えに女性はにっこりと微笑みます。 「何て正直な若者達でしょう。褒美にこの『賢いゴールド』と『親切なゴールド』と『通常のゴールド』を差し上げましょう」 要らない。 心底そう思ったところで後の祭り。 投げやりな感じにポイッと投げ出されたゴールド三人をクリスタルとシルバーは全力で回避しました。 「ーっていう夢を見たのよ…。ねぇ、ゴールド。どう思う?」 「…とりあえず、オレに失礼だとは思わねぇのか?後、謝れ。夢の中のオレに」
「ねぇ、グリーン」 「何だ」 「あたしも「天使のキッス」って技使えると思うのよね」 「…いきなり何を」 「イエローがレッドに「嘘泣き」すればレッドは慌てるだろうし、弱って「とくぼう」も下がると思うの」 「……」 「クリスが「にどげり」を使うとゴールドは吹っ飛ぶし、サファイアの「メロメロボディ」の「とくせい」でルビーはメロメロだし、プラチナの「鋭い目」でロックオンされたら逃げ出せないわよね」 「………」 「だからあたしも使えると思うのよ。「天使のキッス」」 「………ブルー」 「何よ?」 「ゲームのやり過ぎだ」 もしも、ポケスペの世界でポケモンのゲームがあったら。 という設定でブルーがポケモン廃人な会話文です。
「…ねぇ、トウヤ」 「何、トウコ」 「今日が何の日か知ってる?」 「俺とトウコの日だろ」 「そうよね」 「ああ」 「じゃあ何でせっかくのトウトウの日に管理人はチェレンとベルの話を更新してるのよ!」 「落ち着け、トウコ。管理人も気付かなかったんだ。今からトウトウの話を考えてたら日が変わるからこの会話文書いてんだろ」 「ちゃんと覚えとけよ、管理人、てめぇ、この野郎。手抜きしてんじゃねぇよ」 「タイトル小説の狂暴トウコ降臨してる。とりあえず管理人逃げろ」 「ちょっとトウヤ!あんた管理人の味方するつもり?」 「馬鹿か。管理人抹殺したら俺達の話書いて貰えないだろーが」 「あ、そっか。じゃあ適度に脅してくる」 「いってらっしゃーい」
例えばだ。 例えばの話だとして。 もしもあの時にボーマンダが襲ってこなかったら。 もしもあん時にグラエナに襲われるルビーば助けとらんかったら。 もしもあの時にサファイアに再会しなかったら。 ボク等はすれ違ったままで。 あたし達は出逢わなかったかもしれん。 例えばの話だけど。 もしもあの時にルビー君に出会ってなかったら。 もしもあの時にあの家を飛び出して靴屋に会わなかったら。 もしもクリスタルさんに出逢わないままあいつらにも逢えずに終わっていたら。 オレはこんなに沢山の仲間とかけがえのない存在を手に入れる事は叶わなかったかもしれない。 ボクは大切なポケモン達と一緒に居る事はなかっただろう。 例えばの話よ? もしもあの時に操られたホウオウにさらわれなかったら。 もしもあの時に姉さんが居なかったら。 もしもシルバーが居なかったら。 もしもあの時にあいつらに出逢わなかったら。 もしもあの時にレッドやグリーンと出逢わなかったら。 今の自分で未来を生きる事はなかったでしょうね。 オレは今の自分を誇る事が出来なかっただろう。 例えばの話ですよ? もしもあの時にトキワの森でレッドさんに助けてもらわなかったら。 もしもあの時にイエローと約束してなかったら。 もしもあの時にレッドさんを助ける為にレッドさんを探す旅に出なかったら。 オレはジムリーダーを目指さなかったし、イエローを知らないまま生きていたんだろう。 ボクはラっちゃんと友達になれなかったし、ピカやチュチュと出会う事もなかったんだろう。 例えばの話だけどよ? もしもあの時にシルバーとワニノコを追いかけなかったら。 もしもあの時にオーキド博士の依頼を受けなかったら。 もしもあの時にウバメの森で共闘しなかったら。 私達お互いを知らないままだったでしょうね。 オレ等は喧嘩をする事もなく、お互いの存在を知る事もない生活を送ってたのかもしれねーな。 例えばの話だよ? もしもあの時にナナカマド博士達とぶつからなかったら。 もしもあの時に一緒に旅をしない事に決めていたら。 もしもあの時にパールとダイヤモンドという私と同い年の少年の護衛に疑いを持っていたら。 オイラ達はこんなにも大切な時間を得ることはなかったと思う。 オレは大事な事を見逃していたかもしれない。 私は今以上に大切な事を知る旅をする事は出来なかったかもしれません。 例えばの話だが。 もしもあの時に先生のもとで修行を積まなかったら。 もしもあの時にレッドやブルー、イエローに出逢わなかったら。 オレはレッドという切磋琢磨し合う良いライバルや、ブルーやイエローなどの図鑑を通じて繋がった仲間を得ることは出来なかっただろう。 例えばの話に過ぎないけれど。 こうして知り合う事もなかったかもしれないから。 だからこそ、今こうして傍に居れる事を、皆で笑いあえる事実を幸せに思う。 けっしてないとは言いきれない世界だからこそ この繋がりを大切に思う。
ふと目が覚めた。 眠たい目を擦ろうと思って手を顔に伸ばす。 コツリ。 固い音と感触に疑問が頭の中を駆け巡った。 そして思い出す。 自分の顔に着いているものは仮面だ。 ならば、ここは…。 ここは…!? っ…。 荒い息をはいて周りを見渡せばそこは真っ暗で何も見えなくて。 全てを呑み込むその闇に悲鳴を上げそうになった。 「…ねえさん…?」 寝ぼけて自分に近寄る弟の存在にブルーは深呼吸をして努めて息を整えた。 「どうしたの?シルバー」 「ねえさんがないてるこえがきこえたの」 シルバーの発言にブルーは息を呑んだ。 「ねえさん、だいじょうぶ?どこかいたいの?」 心配そうに自分を見上げるシルバーを抱きしめて、ブルーはシルバーを安心させる様に笑った。 「だいじょうぶよ。あたしはへいき。シルバーがいてくれるもの。ここはさむいけど、こうしてシルバーといっしょにいたらあったかいから」 「あったかい?」 「うん。あったかい」 そっかぁ、あったかいね。そう言って笑うシルバーと二人であったかいねと笑い合って、抱き合った。 シルバーとブルーが震えているのは寒いから。 手を取り合ってお互いの温もりを確かめるのは寒いから。 そう理論付けて小さな幼子達は涙を流した。 本当は、淋しい。哀しい。 誰か、気付いて。助けて。
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