共有しているつもりの秘密


厩舎の隣の鶏小屋は、そこにすごく不自然にあって、私はとても気になっていた。
「そのニワトリ、リヴァイ兵長がヒヨコから育てたらしいよ。結構有名な話なんだって。なんで育ててたのかは知らないけど。」
一緒に入団した友達が教えてくれた。私達が調査兵団に入る少し前に小屋が建てられたって。
兵長とニワトリ・・・すごく不似合い。っていうか、ヒヨコも不似合い。だって、トリってすごく散らかすし、うるさいし、潔癖な兵長は嫌がりそうじゃない?
でも、それから、ニワトリと兵長が気になって、気になって。ニワトリ、寂しそうだなぁ。一羽だけなんて。
ある日、露店でヒヨコを売っているのを見かけた。つい、衝動買いで一羽買ってしまった。私、コレどーすんの・・・。
兵長の真似して育てみたかった、なんて一瞬魔が差して、気付けば手の中のふわふわの暖かさ。なんでそんな事、思ったのかわからないけど。
同室の子には謝り倒して、ヒヨコを飼った。ナイショにする代わりに、今度町で食事をご馳走する事になった。
だんだん大きくなって、兵長もこんな風に成長過程を見守ったのかな?ヒヨコを見てカワイイとか思ったかな?見た目は怖いけど、やっぱり優しい人なんだ、大変なのにどんな顔して面倒みたんだろう・・・とか想像した。兵長と同じ事をしてる満足感?優越感?なんだかほんわかした気持ち。
見た目はニワトリなのにまだ鳴き声はピヨピヨな頃、壁外調査があった。
「もう大丈夫かな。いじめられないかな。」
面倒が見られない調査の数日間、兵長のニワトリのいる小屋へこっそり入れる事にした。ずっと育ててきたし、かなり寂しい。
「帰ったら、会いにくるね。」

壁外調査、無事に戻れた。すごく怖かった。でも育てたヒヨコが小屋で仲良く過ごせているか、気になって。兵長の活躍も気になって。遠くの班だったから拠点でチラとしか見えなかったけども、相変わらずクール。(私も同じくヒヨコを育てました。)と心の中で報告すれば、兵長の顔が違って見えた。
ニワトリが増えた事は食堂のおばちゃんと一部の人たちの間で話題になってた。もう言い出せないし、引き上げて自分で飼い続ける状況でも、もはやない。意外にも、犯人探しみたいな雰囲気もなくてほっとした。
やがて2羽のニワトリは卵からヒヨコを孵し、数を増やした。どっちが雄鶏でどっちが雌鳥かなんて、私には見分けつかなかったけど、つがいになったんだね。最初に1羽で見かけた時の寂しさが消えて、つい「よかったね」と微笑んだ。
その後も時々、野原や森で摘んだ実のついた草を小屋に入れてやる。
兵長は、ここへは来ても馬に用があるのであって、ニワトリ小屋は気にしてる様子は無い。私とも、接点もほとんど無いし、多分、私の名前も知らない。

「衝動買い、とか言って、当初はどうなるかと思ったけどさ。卵が取れて皆の食卓潤しているし、もう言ってもイイじゃん。」と同室の子に言われるけど、そのたび、絶対ダメ!と言って口止めしている。
だって、衝動買いの理由も言ってないけど、更にこっそり心の中で、ニワトリに兵長と私を重ねて、子沢山の家族を妄想してる、なんて、なんの拍子にバレるかもしれないし!絶対、知られたくない!
今まで黙ってくれている彼女の口の固さには感謝だ。

私の秘密。それはニワトリ小屋に行く度に感じる胸の中の暖かさ。



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