肉食系ラビット | ナノ
第二種目

 


「じゃあ行ってくるか」

「実熊さんファイトっす!」

「ああ」


俺の頭をぐしゃって撫でてから実熊さんはフィールドの方に向かった。
剣道部の中じゃあんま思わなかったけど実熊さんでけぇな。
体格も良いから尚更目立つ。

『おやっ、まだ生徒会がまだ集まっていません!』

『生徒会からはどなたが出るのでしょう?楽しみです!』

そりゃ観客からしたら楽しみだろうけど生徒会には正直出てほしくねぇ。
今はまだ少しの点差だけどまた1位取られたら流石にヤバイ。
パン食いの方が配点デカイんだよな、何故か。
まだまだ種目があんのに一気に点差が空いたら困る。
リフォームが…!


「ごめんね〜。生徒会は俺だよー」

「羊一様頑張ってぇぇえっ!!」

「藤堂様が運動する姿は貴重だぞっ!録画しないとっ!!」

観客席を見たら結構の観客がビデオカメラを構えてる。
普段どんだけサボッてんだあの人。
ファンの目が血走ってて怖ぇよ。
そういや中学も競技中ベンチで寝てたような記憶がある。
……あの人、運動出来んのか?


『藤堂選手もスタートラインに並んだのでいよいよパン食い競争です!』

『選手の皆さん、位置について、よーい……ドン!』


放送と同時にピストルが鳴って選手が一斉に走り出した。
実熊さん、頑張れ!


『1位は何と、我らが放送部!続きまして水泳部、吹奏楽部です!』

「……あ?実熊さんは?」

「実熊さんなら前の方に居ても良い筈なのに」

「なぁなぁ汰狼君、生徒会もおれへんよー」

俺の手を握ってくる鷹嗣の手を払って豹呀さんと見渡して実熊さんを探す。
後ろの方にも居ねぇ。
そして会長も居ねぇ。
会長はともかく実熊さんなら直ぐ見つかるはずなのに。
どうなってんだ?

「あ、居た」

豹呀さんが指を差したのはスタート地点付近。
まさかの光景に皆黙ってしまった。


「お、おいっ!羊一離せっ!」

「いーじゃん。幼稚園の時はよくこうやって手ぇ繋いでたんだしぃ」

そこには必死に走ろうとしてる実熊さんの手を会長が涼しい顔で握って歩いてる姿があった。
何だこの光景。


『剣道部主将、辻本選手と生徒会長、藤堂選手、仲良く手を繋いで歩いています!』

『辻本選手と藤堂選手は幼稚園からの幼馴染みとの事です。何という微笑ましい光景でしょう!』

「羊一!部費がかかってるんだっ!離してくれっ!」

「まぁまぁ、慌てるなってー」


会長、必死に走ろうとしてる実熊さんを無視して楽しそうに笑って歩いてるよ。
実熊さんに引っ張られるどころか実熊さんが引っ張られてる。

「……実熊さんて、結構怪力やなかったですかー?」

「ああ。その筈なんだけどよ…全く動じてねぇよな。会長…」


我が部一力持ちの実熊さんをあんな容易く…会長の腕、どうなってんだっ?
つかマジで実熊さんの手を離してくれ!


 


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