声に乗せて | ナノ


 


「何そのオイシイ展開!やっぱ食い付いたんだっ!」

興奮気味の桜慈と気まずそうに聞いた俺と驚いて口が空いてる陵を見て徹は引き攣った笑みを浮かべた。

「もう知ってんのか。まぁ、あれは驚いたけど、燈瑪を守る為なら別に…キスされたぐらい何て事ねぇし」

なんて男らしいんだ徹。
男にキスされたのにそれでも俺の為にって友達思い過ぎるだろっ!
俺、男にキスなんてされたら…あれ、別に何とも思わないかも。
桜慈の本のお陰で免疫あるし。

「とにかく、この作戦は成功だな。王道主人公については桜慈に習って、迫られてもそう簡単に襲われたりしねぇよ」

いつにもまして頼もしい徹に感謝の意味を込めて手を握り締めて頭を下げた。


「ほんとにありがとうっ。俺が出来る事なら何でもするからな!」

徹ばっかに負担を掛けたくないからそう提案すると何か徹の雰囲気が変わって頬に手を伸ばされる。

「ほんと?じゃあ、頑張った時は燈瑪にキスしてもらいたいなー」

無邪気に笑ってるけど目が本気だ。
桜慈と陵が徹から離すようと俺の体を引っ張る。

「馬鹿かテメェ!んなの無理に決まってんだろっ!」

「そうだよ!徹はこのまま生徒会とくっついちゃえ!」

二人とも、協力してくれてる徹に容赦ないな。
二人を宥めるように腕を引っ張って徹を見つめる。


「そ、そんなんで良いの?」

「もっちろん!燈瑪がキスしてくれたらあんな馬鹿達蹴散らして頑張れる!」

「そう?まぁ、俺は良いけど」


徹が体を張ってくれてんだから、徹がそれを望むなら応えたいし。
それに、たかがキスだ。減るもんじゃない。
その後桜慈と陵に必死に説得された結果、徹にキスをしたら陵と桜慈にもキスをするという事で話が落ち着いた。


………何でこんな風に話が落ち着いちゃったんだろ。


 


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