2 「あった、あった。雨くんが来ると、早く見つかる」 「なんだよ、それ」 そんなのうそっぱちだってわかってたけど、そういってくれるのは悪くない。 僕は後ろから鈴乃さんの手元を覗き込む。そこにあったのは、白い封筒だった。外国の言葉で書かれているから読めないけど、鈴乃宛っていうのはかろうじてわかる。 「開けてごらん」 鈴乃さんから封筒を渡されて、僕はもう既に破られた封筒のてっぺんをぱかりと 蛙の口みたいに開ける。 中から出てきたのは、青い鳥の羽だった。それから、月桂樹が一枝。 「なにこれ。これもガラクタコレクションの一部?」 「ガラクタじゃなくて、お宝。ただの羽じゃない。いいにおいがする」 いいにおい?鳥の羽から?本当だろうか。 僕は鈴乃さんに促されるまま、鳥の羽に鼻を近づける。 「うわぁ。すごい」 一度嗅いでから、感嘆の声を上げた。 清々しいにおいがする。それでいて、上品だ。 「リラの花の匂いだよ、雨くん」 なんで鳥の羽からそんな匂いがするのかは謎だったけれど、いつまでも嗅いでいたくなるようないい匂いであることは間違いない。 「今度、それを送ってくれた子に冷やしぜんざいを送るんだ」 言われて僕は、なんとなしに手紙の送り主を見る。 青いインクで書かれた斜体は、やっぱりなんて書いてあるのかわからない。それを知ってか知らずか、鈴乃さんが僕の手から封筒を取り上げる。 「さっそく、瓶に詰めて送らなくちゃ間に合わない」 鈴乃さんは封筒を持って台所へ向かっていく。僕もそれに続いた。 台所へ向かう途中、庭に一羽の青い鳥が見えた気がした。 「ねえ、誰に送るの」 僕はその鳥を気にしながら、鈴乃さんの後ろから聞いてみる。すると、鈴乃さんは少しだけ僕を振り返って悪戯っぽく笑った。こういうときの鈴乃さんは、ちょっと子供っぽい。 「白い綿菓子みたいな髪をした子供にだよ」 台所の暖簾をくぐって、鈴乃さんが消える。 僕はそれを見送ったあと、庭に目をやった。やっぱり青い鳥が花橘の枝に止まっている。 「ねえ、鈴乃さん。青い鳥がいるよ。この羽の鳥かな」 台所へ報告に行けば、鈴乃さんは慌てた顔をした。 手に持っている瓶をびっくりして落としそうになりながら、ぜんざいを急いで詰めている。 「うわ、大変だ。メリノのおつかいがもう来ちゃった。雨くん、手伝って」 メリノとか、おつかいとか、僕にはわけがわからないまま、鈴乃さんを手伝う。 あとで、お駄賃代わりに僕もぜんざいをもらおう。鈴乃さんの作ったものは、本当においしいんだ。 end |