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「ん…………」
ぼぅっとぼやけた視界の中で、光る画面が見える。
段々と視界がクリアになり、その画面が映画のメニュー画面であることに気づいた。
それと同時に昨夜のことを思い出す。映画を見ながら夜更かし耐久レースだとか馬鹿げたことを言い出した綱吉くんのせいで、何本も次々と映画を見るはめになったことを。
最後に記憶があるのは三本目の中盤の方だ。その頃には白蘭と雲雀くんは寝付いて、綱吉くんもうつらうつらとしていたから、この画面は三本目のものか。しかし、三本目がどういう映画だったかは全く思い出せず、ソファの上で足を組み考えているうちに、僕の肩に寄りかかっている白蘭が身をよじった。
「……んぁ…………?……骸クン?」
「起きましたか」
ぼーっとして腑抜けた顔に、胸がこそばゆいような愛しさを感じる。
白蘭の意識が覚醒していないことを良しとして、存分に口角を緩めた。
「…………んん……、あれ、……雲雀チャンは……?」
「雲雀くんなら、客用の布団を貸したじゃないですか。あっちの部屋で寝てますよ?」
「…………綱吉クン……?」
「そこです」
綱吉くんはカーペットの上で大の字になってぐっすりと眠っている。ちゃんと掃除機をかけておいて良かった。
「…………」
「まだ6時ですよ、眠いならもう一度……わふっ」
突如としてソファに押し倒され、驚いた声が漏れた。
綱吉くんを起こしてしまわなかっただろうかと視線を走らせようとしたが、白蘭が僕の頬に手を当ててそのまま固定したものだからかなわなかった。
「骸クン……」
「…………何ですか、この体勢は」
「ねぇ、」
白蘭の顔が近づいてきて、僕の視界を覆う。
キスをされるのかと思い、きゅっと目を閉じて待つと、唇への感触ではなく耳への感触が、あ、これ、くすぐったい。
白蘭は僕の耳に唇をつけたまま囁く。
「きのう雲雀チャンに言われたんだ」
「……ッ、なんで、すか」
「骸クン、丸くなったよねって」
何か気になることを言われた気がしたが、くすぐったさでそれどころでは無い。気を抜いたら大きな声が出てしまいそうで、白蘭の服の裾を強く握った。
「僕さ……少しは自惚れてもいいのかな?」
「…………っ」
「フフ、わかんないよねそんなの」
「も、……どいて下さいッ……!」
耳元で小さく笑われて、限界だった。
ぐいっと肩を押すが、それで逆に変なスイッチを押してしまったようで、耳にぬめった感触が走る。
「っんぁ……!?」
「相変わらず耳弱いんだね」
「びゃくっ、やめ、」
「うーん」
フッと耳に息を吹きかけられた。
背中にぞわぞわと電流が流れ胸が反り、みっともない声が出てしまう。
「ねぇ、他人がいる状況って、興奮するね?」
その言葉が死刑宣告に聞こえ、体の中の熱が更に疼いたと同時に、頭の中の理性が全てを諦めた。
綱(今更起きてるなんて言えないどうしよう)
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