秋になるのに

俺は木の作る日陰の下に寝そべっていた。

カラカラとした空気が俺の周りにまとわりつく。

なんてうざったい、なんて暑苦しいんだろう。

まるであいつみたいだな。

そう思うと不思議と笑いがこみ上げてくる。

暑かろうが、寒かろうが、あいつが近づいてこない日はない。

そういえば、あいつはいつから俺のそばにいる?

気がついたら隣にいた。

クラスはたまたま同じで、席も近くて…

あいつはいつの間にか、いつも俺の近くにいた。

あの山吹色の髪を見ないた日はないぐらい、

気がついたら…そばにいる。

そういえば、

…そろそろ秋が来る。

…あの憂鬱な季節がくる。

夏の暑さから解放され、途端に皆、だらけ始める時期が来る。

あいつも…少しぐらい、だれればいい。

ただ、秋は嫌いじゃない。

何より栗が一番実る時期だからだ。

秋は栗が格別うまい。俺はそれだけで満足できる。

それから…木枯らしの風情も嫌いじゃない。

何にも捕らわれず、ただ自由に葉を纏わせて、流れてく風が悪くない。

俺も…何も背負うことなく、ただひたすらに生きてみたい。

まぁ…捨てられねぇ、めんどくせぇ荷物はあるがな。





「亜久津ー…?何してるの?」

突然日の光を遮る影が入ってきた。山吹色の髪の黒い影が揺れている

「…寝てるだけだ」

「こんな暑いのに?変なの」

もう秋になる。

それなのに葉は青々として、枯れる気配はちっともない。

俺は目の前にちらつく山吹色の髪に手をかけた。

気を遣っているのか、サラサラとして触り心地がいい。

「あ、亜久津?」

「…てめぇの髪は…落ち葉みてぇだな」

「えっ、ちょっとひどくない?というか急にどうしたの?」

「…ただ思っただけだ」

もうすぐ秋になる。

秋は…枯れる時間だ。

だが、きっとこいつは…いつまで経っても、変わらずこの山吹色の髪をなびかせてるんだろう。

「暑い…」

「俺がもっと熱くしてあげようか?」

「黙れ」

もう一度髪に手をかける。

「やっぱり…落ち葉みたいだな」

そしてそのまま、夏の終わりの暑さを感じながら俺は目を閉じた。



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