"けいたいでんわ"
♪−♪♪−−…
もし俺たちが300年も前ぐらいに生きてたら、
キミの声を聞きたくても、
キミに何か伝えたくても、
キミにすぐには届かなかったんだ。
電気がなかった時代のほうが長くて、
手紙も届けられない。
電話もできない。
もしそんな時代に生きてたら、
俺は何がなんでも、
キミに会いに行く。
必ず?
−必ず。
何があっても?
−何があっても。
どんなに時間がかかっても、俺はキミの傍にいたい。
俺がキミに愛を伝える方法はいくらだってあるんだから。
「…もしもし?」
『…千石か?』
だけどやっぱり昔には戻りたくない。
時間がかけるのはロマンチックだけど、
やっぱり俺は、
キミのその声をすぐにでも、この小さな箱からきいていたい。
「どうしたの?電話なんか珍しいね」
『うるせぇ。ちゃんと機能すんのか、ただ試しただけだ』
「あの亜久津がちゃんと携帯使えるなんて、俺チョー感激っ」
『……切るぞ』
「あっ!ちょっと待ってよ」
『…んだよ』
「大好き、亜久津」
『っ……電話越しにいうんじゃねぇよ』
「今しかタイミングないと思って、明日家行くからね」
『…また連絡よこせ』
「は〜い」
『…』
「……」
『……なぁ』
「なに?」
『どうやれば電話っつーのは終わるんだ?』
「…えっ?あっ…俺が切るからいいよ」
『…チッ』
「今度手取り足取り使い方教えてあげる」
『いらねぇお世話だ』
「楽しみにしててよ、じゃあまた明日」
『……あぁ』
キミのその声がすぐに聞けなくなったら、
俺はきっと、
毎日、ずーっとキミの傍にいるから。
かわいいキミの声を
いつも俺に聴かせてよ。
便利な便利な小さな箱、
これがいらなくても、
ずーっと、一緒にいれたら…いいのにな。
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