徒然なるままに
中心



紅了[眼鏡を外す瞬間] 本誌ネタバレ


 紅葉は眼鏡を絶対に外さない。勉強中はもちろん、机に伏せる時も、ボクシングをする時もだ。

(それほどまで、視力が悪いのか)

 ボクサーとして考えてみると、眼鏡のような繊細な装飾品を身に付けながら殴り合いだなんて信じられない。時計ですらも、普段身に付けないものを右手に着けただけで左右のバランス感覚が損なわれる気がすると言うのに、だ。

「僕の顔を見つめて、どうした?」
「いや……お前は、眼鏡を掛けながらよくボクシングが出来るなと」

 紅葉は予想外の答えに一瞬虚を衝かれぱちくり瞬きしては眼鏡のフレームを押し上げた。まるで、そういえばこんなものを身に付けていた、とでも言うような雰囲気でさえも感じられた。

「悪いか」
「いや、眼鏡がズレたりするとバランス感覚が狂ったりせんか?」
「僕はそれ位では負けん、それに結局これは外せないからな」
「しかし、眼鏡は直ぐ割れそうだ、お前の眼が傷付くのではないか」

 そう言い掛けながら紅葉の眼鏡に手を伸ばしてみた。

「了平、貴様なにを……」

 眼鏡を奪われたのが気に食わなかったか、心持ち紅葉の視線が鋭くなる。

「紅葉、俺が見えるか?」

 ずい、と顔を寄せ紅葉の瞳を見つめてみる。真朱に燃え盛るような色を宿した瞳だ。

(レンズ越しに見るよりきれいだ)

 一瞬だけ、感心してしまったが、それどころでは無い事を思い出せばもう一度詰め寄った。
 紅葉は顔を背け肘を付いた。

「貴様の顔が近過ぎて見え過ぎる位だ」
「じゃあ、眼鏡はいらんだろう」
「貴様の汚い顔が見え過ぎて結局困る」

 ――失礼な奴だ。


*紅葉→了平なんだけど、紅葉は無自覚です。了平視点でやっちゃったから紅葉の微妙なツンデレが出せなかった……あれ。因みにタイトルは了平のなかのひとが以前出した、「眼鏡を外す夜」を意識しました。2010年10月19日(火)





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