突然の誘いは断る暇も口実も思いつかないままあっという間に決められてしまった。
今度の土曜、一時に公園の時計台の前で。
何かあった時に連絡したいからと連絡先も交換することになった。
あれ、私丸め込まれてない?
そして瞬く間に時間は進み気づけばもう土曜日だった。
そわそわと落ち着かない気持ちのまま、私は公園へと向かう。
気付かないうちに早足にでもなっていたのかもしれない。
「早く着いちゃった…」
約束の一時までまだ余裕がある。
蓮先輩はまだ来ていないようだ。
私の方が先に来てたと分かったらどんな反応するかなと、少し楽しくなった。
「そういえば…」
無意識に呟く。
レンとは待ち合わせってしたことあまりなかったかも。
待ち合わせをするほど別行動はなかったし、すぐに連絡取ったからなぁ。
待ち合わせはなかったけどいつも私がはぐれてしまってレンが迎えに来てくれていたことを思い出して懐かしくなる。
懐かしくなって、やってしまったと頭を振り思考を散らす。
「…ダメ」
これ以上はダメ。
これでいいのだろうかと思いつつも、今回の誘いをはっきり断ることをしなかったのは心のどこかで嬉しさの方が優ってしまっていたんだと思う。
一抹の不安を持ちながら、結局私はこの縁に甘えてしまっているのだ。
それなのにレンを思い出して今の蓮先輩と比べてしまうなんて最低だ。
気をそらし何か連絡が来てないかとスマートフォンを取り出す。
「え、嘘!?」
そこで初めて気付く。
スマートフォンの充電が切れている。
まだ充分にあると思ってたのに。
「どうしよう…」
真っ暗の画面を見つめ、急激な不安が私を襲う。
一度起こった不運は重なるもので。
それとも酷い考えをした私への罰なのだろうか。
不穏な暗雲が徐々にこちらへと向かって来ていた。
やがて、それはぽつりと一粒私の頬へと零れた。