ZZZ | ナノ

丁重に遠慮いたします


「ダンテ!いらっしゃい!」


教会の門を潜って一番初めに視界に飛び込んできたのは、眩しいくらいのナマエの笑顔と、子供たちだった。


「ああ、相変わらず賑やかだな、ここは」
「ふふ、今日は天気もいいから外で遊ぶことにしたんです!」


駆け寄ってくるナマエより先に、しゃがんだダンテの胸に次々と飛び込んでくる子供たちを同じようにしゃがんで微笑ましそうに見つめるナマエは、いつもの純白のロングスカートではなく、動きやすそうなズボンを履いていた。

ダンテが首を傾げたのに気付いたのか、彼が口を開くのと同時に胸に張り付いていた子供たちがきらきらと瞳を輝かせて口を開いた。


「ナマエね、ダンテみたいにジャンプできる練習してるんだ!」
「あっ、あっ、こら、だめ!ノア!」


ダンテの胸にすり寄るノアの口を慌てて塞ごうとしたナマエだったが、時すでに遅しで。ノアからダンテに視線を向けると目を細めて「ほー…」と小さくつぶやいていた。


「……う、…だって、ダンテみたいにジャンプ出来たら楽しそ…んんっ!」
「だって、じゃないだろ。転んで怪我でもしたらどうするんだよ」
「…はい…」


ダンテに鼻をつままれてしょんぼり項垂れるナマエと、それを見て苦笑いを零すダンテの間からひょこりと顔を出したノアが嬉しそうに微笑んだ。


「ナマエがダンテに怒られてるー!」
「お前らはちょっとやめるように言ってくれよ!」
「えー、だってダンテのジャンプかっこいーじゃん!」


ナマエの珍しい表情にノアが楽しげに声を上げたせいで、周りでほかの遊びをしていた子供たちが集まってくる。ノアの頭を軽く小突いたダンテはいまだにしょんぼりしているナマエの頭を少し荒っぽくがしがしと撫でた。


「俺は君が俺の目の届かないところで怪我をするのが嫌なんだ」
「…うん、ごめんなさい、ダンテ」
「まあでも、そこまで俺みたいなジャンプしたいって言うなら練習に付き合ってもいいぜ?」
「ほんとう?」


ダンテから離れてすり寄ってきたノアをナマエが優しく抱きしめると、周りにいた子供たちも次々と彼女の背中にもたれかかったりしてきゃっきゃと笑っている。


「ナマエ、ダンテに練習手伝ってもらえるのー?」
「ナマエ、ジャンプよりおままごと付き合ってー!」
「…ふふっ!待って、待って!ちょっとだけ練習したいの。お願い」
「えー!じゃあ一回だけ!」
「一回ー?それじゃあジャンプできないよ」


集まってきては甘えるように抱き付いてくる子供たちにもみくちゃにされながら楽しそうに笑うナマエを見て、ダンテの口元が緩む。それにいち早く気付いたノアがダンテの頬にそっと触れると満面の笑みを零した。


「ダンテがにやにやしてる」
「うるせー」


片手でもう一度ノアを優しく小突いてもう片方の手で口元を隠すダンテを覗き込むようにしてナマエが見ていた。


「…なんだよ」
「何かいいことありました?その手離してみませんか?」
「やだね」
「ふふっ」


ノアを小突いた手で、嬉しそうに笑うナマエの頭を撫でてやる。そうすれば、周りにいた子供たちも自分も、としがみついてくる。信じられないほどそれが幸せだと感じられた。


「ダンテ、ジャンプの練習!練習しましょ!」


いつの間にか目の前のナマエが立ち上がって、先ほどのノアと同じようにきらきらと目を輝かせていた。ナマエに釣られて立ち上がると、にっこりと微笑んだダンテは彼女の手を取ると教会へと歩き出した。


「…?ダンテ?教会の中じゃ狭くて出来ませんよ?」
「いや、練習は外でやるさ。…その変わり、この前俺が買ったミニスカートがあっただろ?あれを…」


にこにこと嬉しそうなダンテの言葉を遮るように大きく振りかぶったナマエの片手が大きな音をあたりに響かせた。




(…俺はビンタよりキスがいいんだけどな)
(ダンテの変態!)


Poison×Apple

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