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そうして愛を語ろう(黄昏)


ほんのりと肌寒さを感じて目を開けた。窓から差し込む日の光はそれと一緒に新緑の葉を透かして輝いている。


今は何日で、何時なんだろう。向くりと体を起こした瞬間、はらりと目の前を横切った布に、ナマエは大きく目を見開いて慌てて布団の中に潜り込んだ。



「わ、わた、わたし…!」



それにしても全く昨日の記憶がない。床に散らばった見慣れた自分の服に何とか記憶を辿ってみたがどうしても思い出せない。



「あ、起きたか」



そうこうしている間にどこかへ行っていたのかリンクが部屋のドアを開けて入ってきた。ごく自然にベッドに入ってくると「はい詰めてー」とかほざいている。


自分とリンクの関係を考えれば不思議じゃない光景。だけど、まだ一歩先に踏み込むことになかなか覚悟が出来なくていつもリンクに強引にベッドに沈められる。今回もきっとそうだったんだ。


布団からひょっこりと顔だけを出して微笑んでいるリンクをジト目で見つめる。



「…ナマエ?言っとくけど今回はお前が誘ったんだからな」
「うそ!絶対うそうそ!」
「言うと思った…」



はぁ。悩ましげなリンクの口元から吐息が漏れる。たったそれだけの事なのにどきりとわたしの心臓は大きく跳ねた。片腕で頭を支えてくつろぐポーズで私に体を向けるリンクは眉をハの字にするとシーツをごっぽり被ったわたしの頬にできるだけそっと手を添えた。



「昨日モイから貰ったお菓子に少しだけお酒が入ってたんだ」
「…それでわたし、なにも覚えてなかったの?」
「やっぱり覚えてなかったのか」



眉をハの字にしたまま苦笑いをしたリンクは今度は遠慮なくぐりぐりとナマエの頭を撫でる。ぐらぐらと揺れる視界の中浮いたシーツの隙間から見えたリンクのたくましい胸板に慌ててナマエが両手で隠すとリンクの手から離れてシーツに顔を埋めた。



「…そろそろ慣れようよナマエ」
「…無理…」
「昨日はあんなに俺の体見たくせに」



むす、としたリンクの声が耳元で聞こえる。だって無理だ。男の人への耐性がもともとなかったのもあるのに、リンクの体はとても逞しくてとても綺麗なんだから。


シーツに押し付けたまま唸り声をあげていると、ついにリンクから噴出した音が聞こえた。



「リンク、笑ったっ…!」
「ごめんごめん、ナマエが可愛すぎるから」
「ばっ、ばかにしてる!?」
「してない。褒めてる。こんなに俺の事癒してくれるから」



思わず頭を持ち上げたことを後悔したくなるほど、甘いリンクの微笑みに全身が熱くなる感覚を覚えた。


…あ、この感覚覚えてる。いつだったっけ。こんな感覚前にも一度…―――



「…お腹すいてない?」
「空いてない。リンクは?」
「ちょっと空いてるかも。ナマエが昨日夕飯食ってる俺を誘ったか、」
「もう!わかったから!朝ご飯作ってくる!」



何かを思い出すように語り出すリンクの言葉を遮ってシーツの中で申し訳程度に来ていた服を直す。よく見たらこれ、リンクの服だ。


のそのそとシーツから抜け出して床に散らばった服の中から昨日穿いていたスカートを手探りで探っていると、後ろから伸びてきたリンクの腕に突然後ろから包まれた。



「…やっと捕まえた」
「も、もう。離して!」
「俺的にはこのままで朝ご飯作ってほしいんだけど」
「何言ってるの」



思わず笑いがこぼれたナマエに釣られたシーツから上半身だけをだしたリンクもくすくすと静かに笑った。リンクのお願いは無視してスカートを手繰り寄せると足を通すがすぐにその手を止められた。



「だめ。…だってどうせそのあともっかいするから」
「誰がそんなこと決めたの!?」
「俺」
「何その俺様。お仕事どうするの!」
「さっきまでやってきたから今日はもう休みなんだって」



ね、お願い。首を傾げて言うリンクに思わず頷きそうになる。いやいや、だって。百歩譲って昨日わたしがお菓子の中に入ったお酒のせいで酔ってリンクを襲ったとしてそのせいで腰が悲鳴を上げてるんだからもうこれ以上できるわけがない。



「とにかく朝ご飯作りに行きたいから手離してよ」
「うー、スカート穿かないなら離す」
「誰の為に朝ご飯作るんだと思ってるの」
「俺」
「じゃあ離して」
「じゃあ穿かないで」
「…」



だめだ。このままでは平行線だ。これはどうしようもならないと悟ったわたしは盛大なため息を吐き出すと仕方なしに首を縦に振るのだった。




(ちょっとリンクっ!ご飯できない!)
(んー…、俺は我慢できない)


すき

ナマエ?

すき。すき、すき。大好き

……俺も好き。ナマエが大好き

いちばんすき?

一番好き。……はは、お前顔真っ赤


…うん、ごめん。俺我慢できない。

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