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I convey love.(時)


「すき、…きらい、すき…きらい」


ぷつん、ぷつん。


小さな悲鳴を上げて千切れていく花びらに少しだけごめんなさい、を心の中で何度も唱える。

川沿いに座って、今日の収穫が入った籠を傍らに、あちこちにちらほらと咲いている花でありきたりな占いをしていたナマエはいつになく真剣な表情で花びらを見つめていた。



「…なにしてんの?」
「花占い」



仕事を終えたらしいリンクが苦笑を零して後ろから近付いてくる足音が聞こえてくるが、彼女は振り返る様子もなくもくもくと花占いをしていた。

ちょこんと座るナマエの後ろにリンクも腰を下ろした。思い甲冑を無造作に放り投げるせいで分厚い金属がぶつかり合う音がする。

やっと軽くなった体を伸ばしきったリンクは花占いに夢中のナマエの体にゆっくりと腕を巻きつけた。腕の中にすっぽり収まったナマエは、抵抗もしないで大人しくリンクの腕に包まれていた。


「…リンク、汗くさい」
「そりゃナマエの為に仕事してきたもん」
「シャワーくらい先に浴びたらいいのに」


むすくれたナマエの台詞に自分は何かしたかと考えてみたけど、特に覚えもなく花占いを続ける彼女の顔を覗き込んだリンクはその真っ白な頬に優しくキスを落とした。


「で?なんて花占いしてるの?」
「…言わない」


ほのかに頬をピンクに染めたナマエは唇を尖らせながらそう言うとぷつんと花びらを一枚ちぎった。


「…きらい、」
「好き、嫌い、好き、好き…お、好き!」
「あ、ちょっと!何その数え方!」


ナマエ越しに花びらを数えて言うリンクにやっとナマエが振り返る。柔らかい彼女の髪が揺れてリンクの頬をかすめる。その髪をひと束掴んで見せつけるようなキスを落としたリンクは徐々に真っ赤になっていくナマエの顔を見つめて耐えきれずに笑いを零した。


「ナマエ、りんごみたい」
「うーーー!もうばかばかばか!リンクのばか!またやり直しじゃない!」
「そこまでにしときなよ。花がかわいそうだろ」


体ごと振り向いてじたばたと暴れるナマエの細い手首を掴んだリンクはそのままぐい、と顔を引き寄せた。ナマエの視界いっぱいにリンクの顔が広がる。すこし真剣な表情。空のような澄んだ青い瞳は全部見透かされているようでナマエは慌てて視線を逸らした。


「…ごめんな、さい…」
「ん。…それで?その花占いで誰の気持ちを占ってたんだ?…俺の気持ちはもう知ってるだろ?」


ナマエの足元にもう何本か花びらのなくなった花が積まれていた。手首を掴まれたままのナマエはその場から動けずに必死でリンクから間を取ろうとできる限り離れた。

リンクの気持ちは自分と同じだって知ってる。そんなの、もう何年も前から何度確かめ合ったかわからない。そのことに関して言えばあまり不安は感じていない。なにも言えないナマエの手首を掴んだリンクの大きな手がくい、と自分の方へ手首をひねった瞬間ナマエの体が浮き上がった。


「ひゃ…」
「ナマエ、教えて」


首を傾げて満面の笑みで言うリンクにほのかにナマエの体がふるふる、と震えた。怒ってる。別にやましい事なんかしてないよ。そういう意味を込めて何度もなんども首を横に振ったナマエの言いたいことがすぐに分かったリンクは笑顔を緩めて手首を掴む力はそのままにため息を零した。

掴んだ手首をリンクがもう一度引っ張ると、白いナマエの手の甲に静かに唇を落とした。するするとそのまま腕をなぞる様に滑るリンクの唇に反応したナマエの体が跳ね上がる。手首を掴んでいる反対の手でナマエの輪郭をなぞるリンクの親指に長い睫毛が頬に影を落とす。ドキリと一度リンクの振動が強く脈打った。幼少期からずっと一緒にいた彼女は気付けばこんなにも綺麗になっていた。


「…ナマエ、もう一度聞くけど何で花占いをしてたの?」
「…あ…、う…す…好き、になったら…」
「なったら?」


真っ赤なりんごのような顔のまま、ナマエはよほど恥ずかしいのか強く目を瞑った。その間もあちこちに降り注がれるリンクの甘いキスの雨にナマエの体中から熱が生まれる。

恥ずかしすぎてどうにかなりそうだと首を何度も横に振るナマエを余所に、リンクのキスは降りやまない。花占いをしていた理由を言わなければやめるつもりはないらしい。さっきまで占いで使っていた花びらを少し残した花をぎゅ、と抱きしめたナマエは意を決して強く息を吸い込んだ。


「"好き"になったら、言おうと思ったの」
「…うん?」


首筋をリンクの柔らかい唇が振れてびりびりと全身に電気が走ったような感覚に陥る。リンクの金の髪が薄く開けた視界の端でゆらゆらと揺れている。がっちりとホールドしているリンクの甲冑をつけたままの足にナマエがふれる。大きなそれは自分とは比べ物にならない。しっかりと目を開けてすぐに飛び込んできたリンクの広い肩に顔を埋めて掴まれている反対の手でその逞しい体を抱きしめた。

リンクの肩にナマエが額を預けるのと同じくらいにやわらかい風が二人を包み込んだ。ナマエの花占いのせいで千切れてしまった花びらがふわりと浮かび上がった。


「あ、……あい、してるって…言おうと思ったの!」
「…え?」


ぴたりとリンクの動きが止まる。心なしかさっきよりも真っ赤な顔のナマエはこちらを向けずに視線はすっかりあさっての方向を見ている。掴んでいた手首をゆっくり解放して今度は両手で彼女の顔を包み込んだリンクは抵抗を無視して噛み付くようにその唇に吸い付いた。


「ん、む…!リ、リン…!!ちょ…!んっ!ちょっと!…ここ、そ…!」


角度を変えながら何度も味わうようにしてキスをするリンクに押されたナマエはバランスを崩して倒れこんだ。

ああ、今日も綺麗な青い空が広がっている。真上で光る太陽に照らされたリンクの金の髪がきらきらとまるで星のように輝いている。たったそれだけのことなのに、こんなにも愛おしい。目を細めたナマエの瞼にひとつリンクが唇を落とすと、どちらともなく笑いが零れた。


「…俺も愛してる」
「うん、…ふふっ、うれしい」
「もっと言って欲しいんだけど?」
「なら、ちゃんとお布団に連れてください」


そう言って両手を伸ばしたナマエはリンクのたくましい首に腕を回すと、すぐに体が浮かび上がった。

仄かに香るリンクの汗のにおいが心地良い。横抱きにされて自然とほころぶ顔をそのままに、ナマエはもう少しだけ強くリンクの首を抱きしめた。



I convey love.
(出来ればこのままずっとずっとふたりで一緒にいたいです)

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