「ナマエ!!」
勢いよく開けたドアの音が思いの外大きくて時間帯を考えて少し恥ずかしくなる。
部屋の奥にあるセミダブルのベッドに腰掛けて、目を瞑るナマエを見付けてほっと胸を撫で下ろすと、両手にいっぱいの書類をベッドのすぐ近くにある机の上に置いた。
いまだに目を瞑っているナマエの近くに行こうと、椅子を引っ張り出してベッドに寄せて腰掛ける。顔を近付ければ、うっすらと彼女の頬を伝ったのであろう、涙の後が見える。
「……ごめん、傍にいてやれなくて…」
「…あ、………マグナス」
そっと親指で触れて、まだ若干濡れたそこをなぞるとゆっくり目を開けたナマエがとてもきれいに微笑んだ。
「レイアから聞いて飛んできたんだ。…調子はどうだ?」
「ありがと、へいきだよ」
頬に触れたままの俺の手に自分の手を重ねたナマエが優しく言ってみせるが、まだほのかに聞こえる異常な呼吸音に胸が締め付けられる。
「まだ鳴っているじゃないか」
「ご……ごめんなさい」
「謝らなくていい。…ただ、我慢はしないでくれ」
ナマエが苦しくないように。軽く抱き寄せて背中をさすってやると肩に掛かった俺のブルークロスを掴んでひとつ「気持ちいい、」とこぼした。
「まだ横になれそうにないか?」
「…ん、もう少し、だめ、かな…」
弱々しい彼女の声に、思わず抱きしめている腕の力を強くしようとしてはっとする。
「………ごめん、ね。わたし、こんなだから迷惑かけてばっかりだし…」
きゅ、とブルークロスを掴んだナマエの力が少しだけ強くなったように感じたが、その手がふるふると揺れているのに気付いて何とも言えない気持ちになった。
「……、迷惑だなんて思ったことないよ。俺がこうしたいからしてるんだ」
「………ありがと…」
抱き締めた状態で彼女を見ると、まだ荒い呼吸音は聞こえるが、眠たそうに目を閉じようとしているのが見える。
頑張って起きようとしているのか、何度もなんども目を見開いてはいるが、限界だろう。
「………寝ていいよ」
「だいろうふ…」
「ろれつ回ってない」
思わず笑ってしまった俺を見上げてぷくりと頬を膨らませたナマエを見て少し安心する。そうする余裕が出て来たのが確認できたから。
「ほら、もうおやすみ」
「マグナス…」
ゆるく頭を撫でてやると、嬉しそうに表情をゆるませたナマエが俺の胸元に擦り寄って静かに寝息を立て始めた。
………いや、反則だろう、今のは。
穏やかな寝息を立てながら眠りに就いているナマエから視線を逸らして気付かれはしないだろうけど、小さくため息を吐き出す。
熱くなった体に、今は我慢してくれないか。とでも言うように床を見つめて数十分。
「………元気になったら覚悟しといてくれよ」
晴れ晴れとした表情で目を覚ましたナマエが茹で蛸のようになるまで、後もう少し……。
大切
(そのときまで俺も寝よう)
(zzz...)