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エドワードが生活しているのは、キャメロットの王城の中の、いくつある別棟の内の最も大きな場所だった。
幼い頃は両親の生活する居館の一室で生活していたが、6つを迎えた頃にエドワードの部屋はこちらに移された。
エドワードが城出ることは月に1度か2度
あるかないかではあった、そもそも居住を離れることも生来体が弱いと言うことであまり許されていなかったが、塔を下れば大きな庭園が広がっているし、両親含め毎日のように来客があるので寂しさは感じなかった。
今日の授業も終わり、特にやることが思いつかなかったエドワードが手持ち無沙汰にチェスの駒をいじっていると、入室を許可する声が響いた。
その声を聞いて、顔がぱっと明るくなる。エドワードはすぐにその声に応えた。
ギィと重い木の扉が開くと、エドワードとそう年齢の変わらない、やや生真面目そうな少年騎士が現れる。


「お久しぶりです、エドワード様。お変わりありませんでしたか?」

「ありがとう。特にこれといった変わりはないよ、ギャラハッド。」


そう言って傅く紫の甲冑の少年、ギャラハッドにエドワードは顔を綻ばせた。
彼は円卓の騎士の中でもエドワードと年が近いという事もあり、アーサー王はエドワードの外出時、彼を護衛として付けることが多かった。また、エドワードにとっても最も気の置けない仲でもあった。


「何時もの様にこれといったおもてなしも出来ないけど、ゆっくりしていってね。」

「お心遣い痛み入ります。」


エドワードが笑いかければ、ギャラハッドもつられて笑みを浮かべる。
あまり同性に抱く感情ではないとは思うが、本当に、外見だけでなく内面も美しい人だと思う。王にお褒めの言葉を頂きた時はもちろんだが、彼に優しい言葉をかけられると、なんとも言えない高揚を覚えた。心が真綿に包まれる様な安堵を感じるのだ。


「、エドワード様、そちらは……?」


ふと、見慣れぬものを視界にいれて、ギャラハッドは首を傾げた。
青い鳥の見事な硝子細工だ。あまりこの辺りで見るような工芸品ではない、誰かからの献上品だろうか。


「ああ、これ?ランスロットがこの間お土産にくれたよ。」

「サー・ランスロットがですか。」


硬くなった声音にエドワードはぱしぱしと瞬いた。
2人の仲があまりよろしいとは言えない、というのはトリスタンから聞き及んでいたのに、すっかり失念していた。
なにせ2人が揃ったところ見た事がなかったので、今の今まで忘れていたのだ。
エドワードは少しだけ考えるそぶりを見せてから、にっこりと微笑んだ。


「……じゃあ、今度はギャラハッドが僕に何かを贈ってくれる?」

「、っそれは、もちろんです。」

「うん、楽しみにしてるね?」


じゃあお茶を淹れるから待っててねと続けて、エドワードは火にかけていた薬缶を外してお茶の準備を始めた。
以前、自分がやるのでどうぞ座っていて下さいと言ったら僕の楽しみを取るの?と少しだけむっとした表情で訴えられたので、それ以降何も言えないでいた。いや、今はそれは良い。良くないが。
小さな背を見ながらギャラハッドは不敬を承知でこんな事を思った。
エドワード様、お生まれになる性を間違えたのではないか……。と。

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