いとこ以上、
それなら、両思いだろ?
◆馬鹿兄貴

水の音に混じって、勇気の笑い声が聞こえる。

距離のあるその声に、ハラがぐらぐらと煮える。

ムカつく。

何で笑ってんの。
そんなに楽しそうに。


目を細めて声の方を見れば、大きな石の上に腰掛けた勇気の白い肌が眩しい。
……あいつ、あんな日向にいて大丈夫なのかよ。

油断すれば赤く焼けて、夜には辛そうにしている勇気の姿が頭に浮かぶ。
風呂だって、涙目になって入るってのにさ。


「あ、正義」

ばしゃばしゃと足を高く上げて川を上っていくと、その音に気づいた勇気がオレを見て、ほわりと笑った。
その顔を見た途端に、俺の足が止まる。

「? どうかした」

「ん、別に」

驚いた、から。
あ、勇気が俺に笑ってる、そう思った瞬間にぐるぐるして気持ち悪かった体の内側が、すっと軽くなった。
ものすごく不思議だけど、なんとなく悪くない気分。

「勇気、赤くなるから気をつけろよ」

ニっと笑えば、あ、そうだね、と頷いた勇気が、すっと目の前に差し出された手におずおずと掴まった。

因みに、オレの手じゃない。

「勇気白いもんな。こっち、日陰においで」

「うん」

「……」

ムカつく。
ほんと、ムカつく。


久しぶりに帰ってきたと思ったら、なんでオレらに付いて来る訳?
気持ちワリィ顔して、ちゃっかり勇気としゃべってさ。


10も年の離れたこの兄貴には、邪険に扱われた記憶しかない。
遊んでもらったり、まして、今勇気に向けるような笑顔で話を聞いてもらった覚えだってない。


俺だって久しぶりに会ったんだ。
勇気なんて兄貴が大学に行く前に顔を合わせたきりだろう。


なのに。
なんだよ。
そんなに……そいつと話すのが楽しいのかよ。

少し離れた木陰で、兄貴に笑顔を向ける勇気が……。
なんだろう。
よく分からないけど、
何か、透明なバリアがあるみたいで。
喉が塞がったみたいに、声をかけることすら出来ない。


ムカつく。



 ◇  ◇



久しぶりに会った真実(まこと)にいは、来年からオレの家から割と近い会社で働くんだって教えてくれた。

昔から無口だけど優しい真実にい。
こんなにゆっくり話したことはなかったけど……。

「それで? どうしたの?」

「はは、うん。正義の奴、母さんにゲンコツされてベソかいて」

「あはは!」

いっぱい正義の話しをしてくれる。


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