いとこ以上、
なあ、いとこって結婚できるらしいぞ
◇お別れ

ママとパパが迎えに来た。
最後だから、今日も正義と一緒の部屋で寝る。


最後、なんだなあ。

別に二度と会えない訳じゃないけど。

寂しい。

明日からはこうやって、夜寝る前に話をしたり、朝寝顔を見たり、川で魚を捕まえたり……できなくなるんだ。
夏休みの間中、オレの隣には正義がいてくれて。
凄く楽しかった。
毎日毎日楽しくて、ずっと笑ってた気がする。

寂しい。
寂しいな。


「おお!」

「どうかした?」

「見ろよこれ!」

正義は、最後の宿題を布団に寝転びながらやっていた。
家系図を書くんだって。
寝転びながらで、字とか書けるのかな。

覗き込むと、ばあちゃんとじいちゃんから、オレたちの名前までいっぱい書いてある。

「ほら、俺ら4シントーだって」

「うん?」

「オレから父ちゃん母ちゃんで1、そっからじいちゃんばあちゃんで2、下がっておばちゃんで3、勇気で4!」

「うん?」

何か良く分からないけど、正義がにまにま笑ってる。

「何?」

「あっ、勇気知らねえの?」

「うん? 何が?」

にまにましながら正義が絡んでくる。
何の話をしてるのか全然わからないんだけど。

どうしようかな〜とか、勇気頭いいのに〜とか、いい加減ちょっと頭にきて寝たふりすることにした。
そうしたら、正義がちょっと慌てて、思わず噴き出す。

「ねえ、正義、何? 何の話?」

「ん、うん。だから、俺ら4シントーだろ」

「うん」

良く分からないけど、さっき正義がそう言ってたよ。

「4シントーって結婚できるんだって」

「? ふうん?」

「だから、さ、いとこって結婚できるんだぜ」

「へえ、そうなんだ?」

うん、と嬉しそうにする正義の顔を見つめる。

「結婚したら、毎日勇気と一緒にいられるよな!」

「!!?」

え?

ええ?

結婚……!!?


それは……考えもしなかったけど。

でも……

「男同士は結婚できないよ」






「しまった────────!!!」






突然大声で叫んだ正義はばあちゃんとじいちゃんと杜萌おばちゃんにめちゃくちゃ怒られてた。


結婚……。
結婚かあ……。

ほんと、できたら一緒にいられるのにね。




 ◇  ◇



最後の最後で、昨晩、大馬鹿をやらかしたオレに、勇気が手を振る。
くそう。
格好良く見送りたかったのに。


……ちょっと泣きそう。
勇気が泣きそうだから、それ見たら、余計に泣きそうになった。


勇気がいない生活は、きっと、暫くは慣れそうにない。



一章終


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