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ぼくらのテリトリイ



男前くん×ちびっこ
淡く両思い
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「冬なんか大嫌いだ」

寒い。
プールに入れない。


ボクの通う公立高校のプールは、室内でもなければ、温水でもない。
だから冬場はプールに入れない。

週に1度か2度は、温水プールのある施設で練習させてもらうけど、それ以外は筋トレの繰り返し。

軽んじている訳ではないが、うんざりする訳ですよ。
水泳部なのに、プールに入れないとは、如何に。
文句も言いたくなります。


特に、ボクは走るのが苦手。
だからこうして、校内を走りこみ、なんてメニューは泣きたくなる。
寒いし、辛いし、苦しいし。
鼻がズビズビズビズズビ。

隣を走る友達が付き合ってくれてなきゃ、真面目になんて走らないよ、きっと。

「うん、夏の方がいいな」

ボクの呟きに、優しい友人が笑顔を見せた。

何故だろう。
その口から出た言葉は、ボクの言った事とほとんど同じ意味なのに、とても耳に優しい。

「な、ちょっと休もうか?」

「うん! 休む休む!」

校舎裏の林の中は、絶好のサボリスポットだ。
ひょうたん池と呼ばれる人口の池はコンクリートで囲ってあって、丁度座るのにおあつらえ向き。
寒いけど、仕方ない

二人で並んで座る。
暗い池の水面は静かで、水音ひとつしない。
遠くに野球部の掛け声が聞こえるだけ。

「この池って何かいるのかな?」

「お化け?」

「違うし。魚とか」

「どうかな?」

じっと水面を見つめてみても、動くものは何一つない。
なんとなくもの寂しい気分になる。

「この池、確か七不思議だよね」

部室の奥底に眠っていた、何代前の先輩が書き残したのかわからないメモやノート。
その中に七不思議が書かれていたのを思い出した。

「そうなの?」

「うん」

確か……、

「ひょうたん池の波」

「なにそれ」

「池に波が立つのをカップルで見ると、さ、幸せになれる……とか、だった、かな」

言っていて途中で恥ずかしくなった。
なんちゅう乙女ちっくな七不思議なんだ!!

「ふーん」

ほら、興味なさそうだし!
変なこと思い出すんじゃなった。

「ってことはさ、滅多に波立たないってことだよね」

「え? あ……そう、なのかな?」

もやもやしていると、横に座っていた友達が急に動いた。
同時にボチャリと水音がする。

振り返ると、黒い池の表面に幾重もの波紋が丸く広がっていった。

「これも、波、だよね?」

背後からの友人の言葉に、さっきよりも恥ずかしくなったのは、これ如何に。


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青春デス。


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