「
ぼくらのテリトリイ」
弦
一途チャラ×ぽっちゃり腹黒S
雄っぱい
*前頁のスピンオフ的
--------------------
あいつら、看的で何してやがる……。
小さなのぞき窓の向こうに見えてしまった情景に、微かな苛立ちが心をざわつかせた。
物陰とはいえ、誰に見られるとも知れない場所で。
問題になったら面倒だ。
浜中のアホは、言ったってどうせ聞きゃしないだろうし。
小野田に後で言っておこう。
キスは家まで我慢しろよ、ヘンタイ。
真面目な小野田が顔を真っ赤に染めるのが目に見える。
その想像に満足して、弓を引いた。
頬に冷たい矢が触れる。
あれ、また太ったかな。
「永田っ!!」
「……何?」
デリカシーのない悲鳴に、微笑を作って弓を下ろした。
「石川、声がでかいよ。ここ、射場なんだから静かにしないとダメだろ?」
「……うグ、……ごめん」
なるべく優しい声でそう嗜めると、くしゃりと顔が歪んでハニーブラウンの頭が俯く。
爽やかな風貌に加えて、叱られた小型犬のようなその様子は、庇護欲をそそるのだろう。
三年の女子や、女教師に可愛がられているのをよく見かける。
僕だって可愛いと思う。
そりゃもう、ぐちゃぐちゃに泣かせてやりたい位に。
「それで、どうしたの?」
「え?」
「用があったんじゃないの?」
用件は分かってるんだけど。
可愛いなあ。
「あ! ええと……あの、……あの……これ、さ……」
手に持った胸当てをおずおずと差し出す石川に、嫌そうな顔をしてみせた。
「やだよ、恥ずかしい」
「や、だって……」
「やだ。ぼく、女の子じゃないもん。付けないよ」
ワザと早口で恥ずかしそうに言えば、困ったように石川の眉が下がったけれど、差し出した手は下ろさない。
もごもごと、小さな声で言葉を重ねる。
「……だって、永田、弦が当たって痛そうだし……」
「全然痛くないよ。平気」
「でも……胸んとこ食い込んでるし……」
「平気だよ」
「……でも……着けた方が……」
「……石川?」
じっと目を見つめれば、視線を逸らした石川の頬が、うっすらと紅色に染まった。
「……俺がヤなの。永田のおっぱい、エロいんだもん。……隠して」
全く。
可愛くて可愛くて、仕方ないぼくの恋人。
--------------------
あれ?
恥ずかしがるぽっちゃりを書くはずだったのに。