「
Odyssey」
邪
悪魔→→→天使
ヤンデレ
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私の胸に縋り付いて眠る愛しい子の頭を撫でる。
日の光を固めたように輝く髪の毛に鼻を埋めれば、とてもいい香りがした。
こんな所まで私を追いかけてきてしまって。
なんて馬鹿な子なんだろう。
堪え切れずに、溜息が漏れる。
本当に迷惑だ。
何の為に、私がこんな場所にいると思っているんだろう。
何かに呼ばれた気がして天を見上げれば、一滴の光が差し込んだ。
こんな奥底まであの光は届くのか。
あまりの驚きに、返って呆れてしまう。
迎えに来られるのならば、最初から寄越さなければいいのに。
困った方だ。
「早く連れて行ってください」
私の服をぎゅっと掴む手の指を一本一本伸ばしてやれば、弟の体がふわりと宙に浮いた。
すやすやと寝息を立てる可愛らしい寝顔に微笑が漏れる。
もう来ないで欲しい。
お前を堕とす気は毛頭ないのだから。
そんなに無防備にされると、本当に困るんだよ、お兄ちゃん。
「……?」
「起きた?」
「んにゅ」
むにむにと口を動かす可愛らしい弟の鼻を摘む。
「お前ね、天使長なんだから、ちゃんと任務に着きなさい」
「……ぅむ……、にいちゃ……」
「私は堕ちたの。今はお前が天使長」
「うえ……」
半分寝ぼけた弟とは会話になっていないが、よく言い聞かせておかなくては。
「今度は、戦場で会おうね」
「……んむ?」
「お仕事。お互い、頑張りましょう」
バイバイ心の中で言いながら微笑んでやれば、安心したようにとろりと瞼が閉じる。
こんなんで勤まってるんだろうか。
お兄ちゃん、ちょっと心配だよ。
次第に浮き上がっていく弟の姿をいつまでも見送る。
お前はそのままで。
美しいままで。
いて欲しい。
そして、戦おう。
全力で。
私のこの手にお前が倒れるか。
お前の胸に、私が倒れるか。
その瞬間こそが私の望み。
お前を愛する私の望み。
父よ、どうかこの望み、かなえ給えよ。
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愛してる。
だから愛さないで。