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労働讃歌



見た目ヤクザな社長×小心者営業
強引キス
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その扉は選ばれた者にしか開かない。

なんちって。


目の前にあるのは雑居ビルのありふれた扉。


魔法の呪文とか、秘密の鍵とか、超無関係です。


その扉を開くのに必要なモノ。
それは。


読経……じゃなくて、度胸。


それだけ。
それだけなんだけどねー。

いや、もう、心臓バクバクして死にそうです。
今親切な人が通りかかったら、絶対「大丈夫ですか?」って聞かれる自信あるね!
顔色とか、冷や汗とか、超ヤバくね? って感じ。

もう、帰りたい。
家に。

いや、もう実家に。

いっそ、土に。

……埋まりたい。



一寸も動けずにいる僕の鼻先を、物凄い勢いで開いた扉がかすめていった。

「!」

「……お、と、佐藤君じゃん! あれ、当たった?」

「イエ、ダイジョウブデス」

「あっはは、どうぞどうぞ、社長でしょ? いるよ」

「ア、アリガトウゴザイマス」

「ぶっ!! ぐははっ!! ご愁傷様あ〜」

「……オソレイリマス」

扉を開いた顔馴染みのチンピラ(社員)(爆笑中)に促されて事務所に足を踏み入れる。

「こここここんにちは! ニッコリースでっふ」
 
「おう、佐藤。よく来たな」

「ヒャっ!」

思ったよりも近くから聞こえたドスの利いた低い声に腰を抜かしそうになった。

「あ……いかわ社長」

目の前には凶悪な面相にニヤリと笑顔を浮かべる色男。


ぎゃー!
ヤクザだー!
間違いないよー!


もうね、商社とか言われてもね。
事務所の装飾も、社員の人相もいかにもすぎて。
ヤクザにしか見えませんから!

いくら先輩から引き継いだ得意先でも、ほんとにほんとに勘弁だ。

「佐藤……」

「ひっ……ンっ、な……ぁ……っふ……」

ほんと、勘弁。


相川社長の逞しい腕が優しく、でも有無を言わせない強さで僕を拘束して。
流れるような動作で顎をすくい取られてしまえば、巧みな舌が僕の口内を犯す。

ないない。
意味が分からない。

なのに。

「ンっ、ふ、ぁ……ん……」

ずくりと腰が痺れる。
体からは力が抜け、器用な手が体をまさぐるのを制止することすらできない。

「ふっ、良い顔をするようになったな」

「……ヤ……ん、っア! ぁ、ぁァ……」

ここ、事務所ですから。
しかも、入ってすぐ。
しかも、社員さんたち、何人もいるんですよ?
事務所ですから。

……皆様、超華麗にスルーしてますけど。


なんて現実逃避をしている間にも、相川社長のオヤジ臭い愛撫に腰砕けになっていく。

「ん…………にゃ……っア、ん……」

「佐藤、向こうへ行こう」

「アあっ!」

耳に噛みつかれて一際大きな声が飛び出した。
それに驚いて、意識が覚醒する。

相川社長の言う“向こう”をちらりとみて、ざあっと血の気が引いた。

視線の先。
重厚な社長室の扉が禍々しいオーラを放っている。

「!! あ、改めて参りますっ!」

渾身の力で相川社長の腕の中から抜け出ると、すたこら逃げる。
お得意さんとか。
仕事だとか。
知らないんだから!
…………あ……あとで謝罪の電話するんだから!



「あーあ、社長また逃げられた」

「そろそろいいかと思ったんだけどな、溶かし足りなかったか」

「もうひと押しじゃないっすか」

「だよな?」



……僕、このままじゃ新しい扉を開いちゃう気がします。
違う。
こじ開けられちゃう気がします。


ンぎゃー。


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長くなってしまった(反省)
推敲はしません。
書きながら楽しかったので……しません。


ちゃんとした商社さんです。
相川社長も堅気です。

一応、佐藤君の逃げ道を用意しつつ、最終的には逃がすつもりのない相川社長。
佐藤君の先輩もグルでしょう。
新人挨拶で一目惚れからの担当者変更へのステップ。

むしろ、ニッコリースって何屋なんだろう←


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