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労働讃歌



俺様Jr×販売員
抱き枕のお持ち帰り
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VIP用の応接室。
そこに置かれている家具価格が頭に浮かんで眩暈がする。

足元の高級絨毯。
体が沈みこむレザーのソファ。
戸棚からペンスタンドまで一級品が取りそろえられている。

うう。
ごめんなさいごめんなさい。
私なんぞが。
あああああ。

いたたまれない。
それだけで泣きそうなのに。

黒服のサングラスをかけた、いかにもな男たちの迫力に、ビビりまくりです。

こわいよ。
こわいよ。
もう、売り場に戻してくれ。

私をここに呼びつけた社長はどこかに消えてしまった。

「……寝不足なんだ」

「はい? ……ヒっ」

フルボディトレーサーの前に立った男が何か言う。
その小さな声が良く聞こえず、無意識に男に近づきながら聞き返してしまった。
途端に黒服の男たちが反応して、ビビりまくる。

「いい。……寝つきが悪い。眠りが浅い。疲れが取れない。」

手を軽く上げて黒服を制した男が、今度は少し大きな声で言う。

良く見れば男の顔は端正なのに、疲れがにじみ出ていて、病人のようだ。
正直、医者に行った方がいいのでは……と思うが、そんな事は私が口を挟む事ではないだろう。

「今からこちらの装置で体型を測定させていただきたきます。そのデータを元にマットレスと枕をお作りしますね」

私は私の仕事をするだけ。
彼が何者なのかは関係ない。


……けれど。
怖いものは怖い。

地域の有力者の息子、と言えば聞こえはいいが、元を正せば頭にヤの付く家業。
まさか、突然殴られたりはしないだろうが、恐怖を感じずにはいられない。

「失礼します」

そっと体に触れて、姿勢を矯正する。
鼓動が早い。
脂汗がジワリと滲む。

怖い。
怖いよ。

直ぐ傍に近づいた男からは、趣味の良いコロンの香がした。
意外なほど爽やかな香に思わず顔を上げると、死神の様な男の双眸と視線が絡む。

「! フィィィィィ!!??」

ガバリ、と抱きつかれて変な声が出た。
と言うか、腰が抜けた。

何?

何?


怖い!!


「……いいかも……」

「ひゃ、ひゃなして……」

恐怖に碌な抵抗も出来ずにいる私を、力強い腕がぎゅうぎゅうと締め付ける。

こ、殺される??

がくがくと体が震える。

なんだ?
何が気に障ったんだ?

胸に埋もれて暗い視界の中パニック寸前だ。


「店長に、これを貰うと言っておけ」


頭の上から聞こえた男の声に、更なる戦慄が私を襲った。


「良い抱き枕が手に入った」







「ひっ非売品です!」

「問題ない」







問題おおあり、だろう?


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枕売る人が枕になる話。


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