死神の帰る場所
企画
若返らせてみよう 23歳×11歳
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治仁 23歳
藤本 36歳−25
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少し怖い、と藤本は思った。

首を大きく仰がなければいけない程高い位置にある治仁の顔。
遠い。

その表情は、前髪の影でよく見えない。

……それが例え無表情だったとしても。
顔が見えないのは、なんとなく不安に感じるらしいと、自己評価する。

正面を向けば、細い腰が藤本の目の前にある。
その横に無造作に垂れた手の長い人差し指をぎゅっと小さな手が捕まえた。
そのひやりとした硬い指の感触を味わう。

こんなに硬い指だったのかという驚きに、藤本の薄い胸がドキドキと騒いだ。


「……」

「……え?」

突然頭上から降ってきた小さな声は不明瞭で何と言ったのわからなかった。
藤本は、反射的に治仁の手から視線を上に向ける。
と、暗い光を称えた瞳と目が合った──気がした。

「おいで」

つかんだままの手を軽く引かれて、首を傾げながらもそれに従う。
ソファーに軽く腰を下ろした治仁の膝の間に立つよう促された。

顔が。

目の前にある。

近づいたその距離に、藤本の顔は我知らず綻んでいた。
それに、微かに眉を上げてみせた治仁の両手が、藤本の頬を包みこむ。

「ちいさい」

「…………それは……」

囁きに少し膨らんでしまった柔らかな頬を、治仁の手のひらが押しつぶす。
肌理の細かい頬がぷにゅりと変形して、唇が突き出た。

「柔らかい」

「それは、子供だから」

「うん」

冷たい手のひらが藤本の小さく薄い耳の後ろへするりと抜けて、首に触れる。

「細い」

「……うん」

「折れそう」

治仁の指に徐々に力が込められいく。
圧迫感が増す喉に眉を寄せながらも、藤本は目の前の黒い瞳をぼんやりと見詰めていた。

首を絞められている。
悪人面の青年が、どこにでもいるようなあどけない少年の首を絞めている。
傍から見れば異様な光景なのだろう、という認識はある。
でも、あまり怖くないのは何故だろう、と藤本は考えていた。


きっと──顔が目の前にあるからだ。

その僅かな変化を見逃さずにいられる距離に、治仁の顔がある。
だから怖くないのだろう、と。



「壊れそう」

「大丈夫」

「壊れる」

「壊れないよ?」

「全部、細くて小さい」

「大丈夫。壊れない」


短い腕を伸ばして治仁の頬に触れる。
柔らかい指の感触に微かに目を細めた治仁に気をよくして、藤本はその肉のない頬をつまんだ。


「君のものなんだろ?」

「……」

「私が壊れたら捨てる?」

「……」

「なら、壊れたって構わないよ?」


首を縦、横に振った治仁の鼻先に、小さな唇で触れる。
不安は伝染するんだろうか、と少し可笑しくなって藤本は微笑んだ。

「!?」

「藤本さん、精通いつ?」

「ふあっ? ……え、え?」

「もう、この頃はきてた……?」

「っ! え……と? どうだ、ろ?」

突然、治仁の手が子供のいたいけな下半身に触れた。
びくりと反射的に引いた腰は、もう片方の手に阻まれて動かない。


「全部見せて?」


小さな耳朶を噛んだ治仁の囁きに、ひっと息を呑む音が室内に響いた。




……御感想は?


「……私、子供だったのに、ね? 容赦……なかった……ね?」

「最後まではしてない」

「そっ! ういう問題じゃない、と思うよ……?」

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