死神の帰る場所
本編
人でなしの死神02

彼の虚ろな瞳は何の感情も宿さない。

こけた頬。
ひょろりと長い体。
露出した白い肌には骨が浮き出ていて、骸骨を思わせる。

モノクロの洋服と、真っ黒な髪の毛。

全くと言っていいほど色味がない。
23歳という若さが、これっぽっちも感じられない。

枯れている、というか、生気がない、というか。

「おかえりなさい」

「……うん」

「今日は、帰らないのかと思ってました」

「……えたから」

「え?」

「萎えたから」

「なえ……」

私の横を音もなく通り過ぎる彼から、微かに甘い香りがした。
今まで女性といたのだと納得する。

「咥えられて勃ったけど、女が足開いたら萎えた」

「っ」

「面倒くさくなったから帰ってきた」

「……かわいそうに」

「何が?」

微かに首を傾げた死神に「何でもない」と答えながらため息をつく。
面識のない私に同情なんてされたくもないだろうが、気の毒でならない。

これまでにも何度か、女性関係を匂わせるものはあった。
その度になんとなく、奇妙に思う。

いや、男なんだから、そういう欲があって然るべきなのだけど。
食べることにも寝ることにも無頓着な彼は、そういう方面にも欲が薄いのじゃないかと勝手に思い込んでいた。

……あながち間違ってもいないのかもしれないけれど。

「あ、ちょっと、脱ぎ散らかしたらいけません」

歩きながら脱皮していく彼が、床に落とした物を拾いながら後を追う。
シャツにボトムに、靴下に下着……。

バスルームに足を踏み入れたところで、振り返った彼と目が合った。

「一緒に入るの?」

「はっ! はいりませんよ!」

「そう」

全裸の体に乗っかる無表情が、閉まる扉の向こうに消える。


赤面してしまったのに気づかれなかっただろうか。
もう見慣れてしまった真っ白な肌に、散らばった鮮やかな赤い斑点が妙に淫猥だったから。

恥ずかしくなってしまったんだ。


彼がベッドに入る前にこの動悸を収めなくては。
抱き枕がドキドキ五月蝿いなんて、とても頂けない。


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