会長^2
会長軟禁された
06

side:石井


あはん。
やっぱりばれてた。


朴念仁の癖に、変な所で目聡いよね。
付き合いが長い分、色々知られてしまっているし。


「大丈夫〜。佐々木さんは絶対に靡かないから」

雫君が旦那様の部屋に行ってしまってから、執事の佐々木さんが様子を見に来た。
坂本の前で交わした一言二言の会話で気付いたんだろう。

だってさ、モロ好みなんだもの。
自然に色目を使っちゃうのは仕方ない。

「そういう問題じゃねえし。ってかそもそもお前はボディタッチしすぎなんだよ」

「ん? 佐々木さんに?」

いやいや、流石に触らせてくれないでしょう。
あの方は。

「違くて。雫様」

「あ、……ああ。そっか。……そうだねー」

確かに触りすぎかもしれない。
癖になってるのかな。

けど。

「見てたんだ? えっち」

「はアっ!!? オっ、えは、仕事で、だ。警備、してたんだよ!!」

「どもっちゃって。顔真っ赤だよ」

「──んな、どうでもいいんだよ、そんなの」

ちょっとからかえば、声が裏返る。
単純。
ほんと、真面目なんだから。

その反応が可笑しくてしつこく笑っていると機嫌を損ねたらしい。

「ったく、クビんなったのだって、おまえ、その所為なんじゃねえのかよ」

おっと、ご明察。

中学生にもなれば、女の子は女になる。
身近な年上の男性に媚を売るようになる。

ポイントは優越感と親近感。

心の距離と体の距離は無関係じゃない。
笑顔といやらしさを感じさせない程度の近さで、乙女心を上手に擽る。

生徒の成績が上がれば、僕の評価が上がるって訳。

幸い、僕にとっては間違っても恋愛対象になる事はない相手だし。
邪な思いを抱く事はない。

結構上手くいってたんだけどね。
ちょっとさじ加減を間違えちゃったのかな。
集団心理の恐ろしさをよく勉強させてもらいました。


黙り込んだ僕に、坂本がちらちら視線を送ってくる。

「ぷ」

「何笑ってんだよ」

「いやいや、良い奴だよね、坂本は」

沈黙に耐えきれなかったんだろうな。
言い過ぎたかな、とか、怒ったかな、とか、きっと心の中で大騒ぎしてるんだ。

ほんと、真面目。


嫌いじゃない。

……ウザイと感じることは良くあるけど。
ほんと、嫌いじゃないんだよ。


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