0°ポジション

月曜日A

駿兎先輩。
駿兎先輩。


オレ、ずっと、あなたに憧れてたんです。
体は小さくても、とっても大きく見えて、先輩みたいな人間になりたいなって、憧れてたんです。
オレはちっさい人間だから。
なりたいなんて思いながら同時にどうせ無理だろうと諦めてしまう位、どうしようもない人間だから。


そんな駿兎先輩に好きだと言われて、……嬉しくない訳、ないじゃないですか。


そっと、駿兎先輩の背中に
手を回した。
硬く筋肉がついた背中。
笑顔で色んな事を背負ってきた、小さな背中。

格好良い背中。

制服越し、手のひらにじんわりと体温を感じる。
駿兎先輩に触れているんだと実感して、不思議と切なくなった。

体を起こし た駿兎先輩が、オレを見下ろす。


「好き。好きだよ、ナっち」


とびきりの笑顔の後の、キス。
今度は駿兎先輩の唇がオレの唇を挟むように動いた。
少し驚いて瞬きをした向こうには、ちょっぴり悪戯っぽく細められた駿兎先輩の黒い瞳がキラキラしている。


ちゅ。

ちゅ。


リップ音の間に、二人の吐息が漏れる。
切ない、吐息。

唇を弄ぶだけの、キス。
食んで、優しく歯を立てる、だけのキス。
たまに、ちらりと触れる舌先。
その冷たさに、自分の唇が熱を孕んでいる事を知る。



焦れて。

焦れて。

漏れる吐息。



手のひらが、お互いの体の上でじわじわと位置を変える。
まさぐる、とまではいかないけれど、でも、ぞくぞくと興奮が高まっていく。

もっと。
欲しくて。

でもそんなこと、言えない。


言えないけど。



自然と開く唇に、きっと見透かされてる。



「っ」

べろり、と唇を舐められた。

少しビクついて、駿兎先輩を見上げる。

「ナっち」

はい、と答えようとした唇に、また駿兎先輩の熱くなった柔らかい唇が押し当てられて、舌が。
微かに開いた唇の間に、舌が。

「っふ……」

オレは口を開いて、それを誘い込んでいた。


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