好き、大好き!
 

下弦の月と同じ設定です



「す、す…」

「ほら、名無し…ちゃんと言って?」

「す…、す…き、やき」

「『やき』はいらないよ…」

「…すっ…すき、あり!」

「うん、『あり』もいらない」


午前のお仕事が終わって名無しと過ごすお昼休み

何をしているのかというと、ぼくはなんとしても名無しに好きと言って欲しくて…

昨晩メールで伝えられたけど、やっぱり本人の口から直接聞きたい

わざわざ言葉にしなくたって名無しがぼくを好きでいてくれてる事はわかってる

でも、女々しいかもしれないけど、やっぱり言葉にして欲しいなって…

その事を名無しに伝えるとこうやって頑張ってなんとか好きと言おうとしてくれてる

だけどさっきみたいに「すき『やき』」とか「すき『あり』」といった感じになっちゃってるんだ

恥ずかしいんだろうね…でも顔を赤く染めながら頑張って言おうとしている名無しはすごく可愛い!

ずっと見ていたいんだけど、もう少しで午後のお仕事が始まっちゃうから…

そろそろ行かないと、遅れちゃったらノボリに怒られる

ぼくは立ち上がって名無しの肩をポンポンと叩いて


「名無し、もういいよ」

「え?」


うーん…ポカーンってしてる顔も可愛いなぁ

って、急いで行かないと本当に遅れる!


「ごめんね、名無し!」


恥ずかしいのがわかってるのに好きと言わそうとした事と、

お仕事に遅れそうでちょっとドタバタした別れになったことを謝って名無しに手を振って部屋を出…ようとした


「ぁ…う、ク…クダリさん!好き!」


え…好き、って?今名無しが好きって言った!?

ドアを開けようとした手を止めて振り返ると名無しは今にも泣き出しそうで、つらそうな顔をしていた

そ、そんなに言いたくなかったのかなぁ…


「これからはっ…ちゃんと好きって言うようにするから…だから、だから…!」


…あ、そういうことか……自分がしたことを思い返したら思い当たる事があった

急いで名無しの元に駆け寄って優しく抱きしめる


「あのね、名無し。愛想を尽かした訳じゃないよ?」

「え…じゃあ『もういい』っていうのは…」

「もう午後のお仕事が始まっちゃうから」

「私…意味を取り違えたって事?」

「…そうなるね」

「う…は、恥ずかしい…!」


恥ずかしさからかぼくの胸元に顔を埋める名無し

意味を取り違えた事より、こっちの方が恥ずかしいと思うんだけどなぁ…

でも名無しからぼくに触れてくる事は少ないし、嬉しいから良いんだけどね


「名無し、顔上げて?」

「…?」


うわ、何だろうこの破壊力!

顔を赤くして目尻に涙を浮かべながらの上目遣い!

思わず押し倒しそうになるのをこらえる

そんな事して名無しに嫌われたくないしね…!


「さっきのさ、ぼく背中向けてたから…今度は顔を見ながら言って欲しいな?」

「う…」


あぁ、顔の赤みが増しちゃってる…心なしか涙の量も増えたような…

やっぱり無理があったかな…と思ってたら


「あ、恥ずかしいなら無理に…」

「私、クダリさんが…好き、だよ」

「…!!ぼくも、名無しが好き」


ど、どうしよう!なんだかぼくも恥ずかしくなってきた!

でもそれ以上にすっごく嬉しい

だって名無しがぼくの為に頑張って顔を見ながら好きだって…

あー、もう!本当に…本当に可愛い、大好きだよ名無し!

離さない、離したくない、絶対に離さないから!





(あの、クダリさん…?)

(ん、なーに?)

(お仕事は…良いの?)

(あ…わ、忘れてた!ノボリに怒られちゃう…!)




 

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