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大セナで鷹モンで水族館



「なんか…いいね」

今、この時を鷹は曖昧に表現する。ほんのり笑みを浮かべながら目の前に広がる巨大な水槽を眺める。

「なんかって、何?」

等間隔に置かれたソファに並んで座る二人。隣の鷹に恨めし気な視線を送りながらセナは聞いた。

「…なんか、いい」
「……僕たち迷子なのに?」
「…非日常的なのがいい」
「僕たちの携帯、充電切れてるんだよ…もう一生会えないよ…」

家族連れ、カップル、友達…沢山の人が溢れる休日の水族館で二人は迷子になっていた。片方はこの状況を他人事のように楽しみ、もう片方は絶望感と必死に戦っていた。大きな水槽では色とりどりの魚が右往左往。同じように知らない人が右往左往。会いたい人は、泳いで来ない。

「はぐれたのはここだよね?」
「うん…大和君もモン太も心配してるだろうなぁ…」

館内をぐるりと一周してみたものの、二人には会えなかった。どうしたものかと焦るセナに、うろうろ場所を移動しててもラチがあかないだろうと鷹が提案し、こうして元の場所に留まっていた。

「連絡は取れないし、二人も僕達みたいに動いてなかったらどうしよう」
「…大丈夫だよ、大和なら多分歩き回ってる」
「……そう、かな?」
「うん」

自信満々というよりはもう既に確信しているという堂々とした頷きだった。でも、もし、といった仮想は受け付けないそんな意思。大和の事をよく知り、理解した者しか出来ない返事だとセナは察する。自分にはきっと出来ない鷹の言動に、セナの心がざわつき始める。

「そっか…そうだよね、あははっ、」

渇いた笑いに鷹は気付いたのかいないのか、何も言わなかった。その時、

「わっ!」
「よっ!」

鷹とセナとは違う男の声が二人の背後に響き、同時に肩を叩かれた。

「雷門っ、大和…」
「び、びっくりした…」

振り返ればそこに探していた人物が立っていた。

「結局、ここだったみたいだね」
「だなっ!いやー探したぜ二人とも」

セリフから鷹の予想通り、歩き回っていたようだった。安心したと表情が和らぐ鷹に対し、セナはやっと出会えた安堵感と、鷹と大和 二人の疎通に切なくなった気持ちが混ぜ込んだ複雑な表情。

「セナ君、ごめん、疲れただろ?」
「ううん…鷹君が…待ってようって言ってくれたから、動いてないんだ」
「大和ならバカみたいに探してると思って」
「おいおい、鷹…」





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2012/05/15 11:46


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