バトルロワイアル

長髪の男はニコニコしながら、言葉を続けた。


「はいはいはい、それじゃあ説明しまーす。と、その前に一つだけ忠告を。"大人の言うことにはきちんと従うこと"です。反抗したり勝手な行動したら、そこの跡部君みたいになりまーす」


男は床に跪く跡部を示して言う。


跡部は唇を噛みしめ、今にも殴りかかりそうな目で男を睨んでいた。


「跡部君は勝手に携帯電話で妹さんに連絡しようとしたので、ちょっと"お仕置き"しましたー」


跡部の腕から流れる血は、手の甲を伝い床へと広がる。


「…っ」


ユキはギュッと手を握り、ただ耐えるしかなかった。


本当は今すぐ立って兄のそばに行きたい。


けれど勝手な行動をしたら、自分だけではなく兄にまで危害が及ぶかもしれない。


それでなくとも兄の頭には2丁の銃が突きつけられているのだから…


「今回はこのくらいで済みましたが、次はありませーん。いいですかー?"次"はないですからー」


そう念をおしてから、男は跡部の周りにいる二人に合図をした。


二人は跡部の頭から銃を離し、静かに部屋を出て行った。


「くっ…」


跡部は長髪の男を睨みつけると、忍足の隣の椅子に座った。


まだ血は止まっていなかった。


跡部は少し顔をしかめて、血が流れる左腕をおさえた。


「はい、それじゃ説明しまーす。まず私が今回の担当の"サカモチキンパツ"といいます」


サカモチと名乗った男は、ホワイトボードに"坂持金発"と名前を書いた。


…どう見ても偽名だが。


「さて皆さんに今日来てもらったのは他でもありませーん」


そして、言った。


「今日は皆さんにちょっと、"殺し合い"をしてもらいまーす」


………


辺りがしん…と静まり返った。


勿論、それまでも無言だったのだが、今は呼吸さえも止まっているかのような静けさだ。


ユキ自身もそうだった。


何…何を言ったの?


私達が…殺し合い?


冗談にも程がある。


しかし坂持は笑みを浮かべながら、なおかつその声には真実を含めて言った。


「皆さんは今回の"プログラム"対象者に選ばれました」


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